「隔離」か「配慮」か ―― 懸念の核心と規制強化の衝撃
しかし、このモデルには、倫理的な観点から慎重な検討を要する側面があることも指摘されている。その中心にある論点が、本業との関係性の希薄化である。
障害者雇用においては、障害特性に応じた業務設計や就労環境の調整を目的として、業務や就労場所を一定程度分離する形態が採られること自体は、合理的配慮や制度上認められた運用として位置づけられている。
一方で、企業の中核事業との接点が乏しい業務に固定され、社会的関係や職業的成長の機会が限定される場合には、インクルージョン(包摂)の理念に照らして「隔離」ではないかとの見方も生じ得る。
こうした議論を背景に、厚生労働省は2023年から2024年にかけて、障害者雇用代行を含む外部活用型の雇用形態についての指針を明確化した。
「代行」そのものは違法ではないものの、指揮命令や労務管理を外部事業者に過度に依存することは適切ではないとされ、企業側の関与を求める姿勢が示された。
企業担当者による定期的な実地確認の義務化は、行政が「雇用実態の見えにくさ」を課題としての認識を示している。
障害者雇用ビジネスの変容 ―― 量から質、そして「戦力」へ
規制強化と懸念の高まりを受け、障害者雇用ビジネスの潮流も変わりつつある。
従来は、雇用の創出や職場への適応支援を主眼としたモデルが中心であったが、近年ではそれにとどまらず、より汎用性の高い「オフィスワーク・IT業務」へと軸足を移す動きが加速している。
2023年度の障害者全体における「事務」職の割合は25.4%と、障害者雇用者全体の中で、「運搬・清掃・包装など」に次いで高い割合を示している。
事務職の割合は、精神障害者や身体障害者など障害別でみた場合も同様に高く、障害者雇用の中でも事務職が大きな割合を占めている。
本来、対人業務やマルチタスクが苦手とされる精神障害者に対し、業務の切り出しや障害者雇用ビジネス等を通じた、適応しやすいオフィスワークの供給が急速に進んだ結果であると推察できる。
実際、データ入力やWebサイトの更新作業、さらにはAI(人工知能)に正解を教えるためのデータ整理など、本社の利益にしっかりと貢献できる仕事を行う「サテライトオフィス型」が増えている。
さらに注目すべきは、障害者雇用ビジネス事業者の施設を「ずっと働き続ける場所」ではなく、あくまで「次のステップへの通過点」とする新しい動きだ。
まずは専門スタッフによるサポートが手厚い環境で働き、業務スキルと体調の安定を手に入れる。そして準備が整えば、本社へ異動したり、在宅勤務で本社のチームに合流したりするのだ。
これは、障害者雇用ビジネスを単なる「場所貸し」として使うのではなく、社員を育てるための「実践的な研修センター(育成機関)」として活用するモデルといえる。
