ニューロダイバーシティの視点 ―― 単なる「数合わせ」を超えて

今後、企業に求められるのは「何人が働いているか」という量的達成から、「どのような価値を生み出しているか」という質的評価への転換である。

ここで重要となるのが、人それぞれ異なる認知の特性を「多様性」として捉える考え方である「ニューロダイバーシティ(脳の多様性)」の視点だ。

障害を「欠損」と見なし、できない部分を補う目的で障害者雇用ビジネスを活用するという考え方は、今日の議論においては必ずしも十分とはいえなくなりつつある。

むしろ、特定の認知特性をもつ人材が、適切な環境やツールを整えることで、平均的な社員以上の成果を上げる可能性に目を向けることが求められている。

次世代の障害者雇用ビジネスに求められる価値は、単に働く「場所」を用意することではない。

一人ひとりの特性に合わせた専門的なマネジメントや適切なツールを通じて、働く力を引き出し、その成果が企業の生産性向上につながる。今後は、そうした成長と活躍を支える存在としての役割こそが中核となるであろう。

経営課題としての「ウェルビーイング」と障害者雇用

障害者雇用ビジネスについては、その是非を単純に善悪で判断することは難しい。自社内で十分な環境整備や支援体制を構築することが困難な企業にとって、外部の専門的リソースを活用することは、現実的かつ合理的な選択肢として位置づけられる場合がある。

一方で、こうした仕組みが機能するかどうかは、企業が雇用主としての責任をどの程度主体的に担い続けるかに大きく左右される。

就労の場が自社拠点以外であっても、障害のある労働者を自社の組織の一員として位置づけ、業務の意義や成果を共有し続ける姿勢が欠かせない。マネジメントを外部に委ねるのではなく、関与の質が問われている。

法定雇用率の達成という数値目標を超えて、個々の働きが企業活動の中でどのような意味を持つのかを捉え直すことができたとき、障害者雇用ビジネスは単なる業務の外部化ではなく、企業のウェルビーイング経営を支える一つの手段として再定義される可能性を持つのではないだろうか。

※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 ライフデザイン研究部 シニア研究員 後藤 博