おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所の独自の継続調査を用いて、2019年から2025年の被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)のエクストリーム通勤者(片道90分以上の通勤者)の割合について、全国及び都道府県別の変化を検証した。

その結果、2019年と2025年の間で、全国割合の増加が確認された。都市圏別では、東京圏、名古屋圏、北関東で上昇トレンドが確認された。また、都道府県別では、東京都、岐阜県、栃木県で増加が確認された。

こうした傾向の背景には、都市部の住宅価格上昇や雇用の集中、在宅勤務の定着など、複数の構造的要因が重なっている可能性が考えられる。

具体的には、都市部の住宅価格上昇による居住地の外延化、都市圏への雇用集中の継続に加え、在宅勤務の定着によって「毎日通わないのであれば遠距離でも許容できる」という働き方が広がったことなどが挙げられる。

また、都市圏別・都道府県別の結果からは、東京圏・名古屋圏・北関東での増加や、東京都・岐阜県・栃木県での上昇が確認された。

これらは、地域ごとの通勤構造、住宅市場、交通インフラの状況が通勤距離の伸長に影響している可能性を示唆している。

こうした結果からは、企業にとって、出社頻度や働き方の方針を明確に示すことがこれまで以上に重要になっていることがうかがえる。

長時間通勤時間は生活リズムや健康、家庭との両立などにも影響し得ることから、働く人の負担を軽減する工夫や柔軟な勤務制度の効果的な活用が、今後ますます重要になると考えられる。

資料

※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

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