中国で新しい石油化学プラントが相次ぎ稼働し、既に供給過剰に悩む各国の生産各社にさらに輸出圧力がかかるとの懸念が強まっている。

ここ10年間で巨大な石油化学ハブを7カ所建設した中国は、プラスチックやゴム、繊維の原料となるエチレンとポリエチレンの生産で米国を抜き最大の生産国となった。

中国政府の狙いは自給率向上だったが、大幅な能力増強によって世界的な供給過剰が進み、計画中の設備が完成し稼働すれば供給が一段と増える可能性もある。

中国のポリエチレン生産は今年18%増えるとの見通しを、中国のコンサルティング会社JLCは示している。国内需要の伸びは10%にとどまり、輸入は13%減少するという。

ブルームバーグNEF(BNEF)によれば、中国は世界最大のプラスチック消費国で、昨年のポリエチレン輸入量は約1500万トンと欧州全体の需要を上回った。

国内生産の増加によって中国の輸入必要量が減少する中で、外国勢は新たな販路を探すか、輸出向け製油所の停止を迫られる可能性がある。

プラント新設の動きは化学品市場に構造的な不均衡をもたらしていると、JLCのアナリスト、リウ・ボーエン氏は指摘する。中国のポリエチレン生産能力は来年さらに16%増える見通しだが、供給過剰と利幅縮小により先送りされる投資もありそうだという。

今年の主な新規稼働は、エクソンモービルが広東省に建設した施設と、石炭化学メーカー、寧夏宝豊能源集団の内モンゴル自治区のプラントだ。

JLCによると、広東省で予定されていたBASFの大型複合施設は、年内に予定されている稼働開始が遅れる可能性がある。

生産能力の拡大は価格の下押し圧力となっている。大連商品取引所で取引されるポリエチレン先物の中心限月は今年13%値下がり。国有の中国石油化工(SINOPEC)は今年、化学部門で大幅な損失を計上している。

供給過剰は製鉄業やソーラーセクターなど中国経済全体で共通する問題で、輸出増加を通じて主要貿易相手との摩擦も生んでいる。中国政府は石油化学と石油精製分野の改革に着手し、小規模施設の淘汰や旧式設備の廃止を進める方針を示している。

だが、中国の生産容量拡大は、ロシアのウクライナ侵攻以降のエネルギーコスト上昇により数百万トン規模の設備閉鎖が相次いでいる欧州の石油化学メーカーには、さらなる重しだ。

BNEFのアナリスト、フィリップ・ジャーツ氏は「中国の国内生産拡大は、既に供給過剰の市場で苦境にある高いコストの欧州メーカーにとって決定打となりかねない」と指摘した。

原題:China’s Petrochemicals Boom Escalating Fears of Global Glut(抜粋)

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