市場で日本の物価上昇を織り込む動きが強まる中、インフレ調整後の国債利回りが伸び悩み、円相場を下支えする力が弱まっている。

国会で答弁する植田日銀総裁

市場のインフレ予想を示す10年物のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は1日に初めて1.7%台を付け、計測が始まった2004年以降の最高を記録した。日本銀行の植田和男総裁が今月18-19日に開かれる金融政策決定会合での利上げの可能性に言及した後も、高水準を保っている。

一般的に日銀が政策金利を引き上げれば名目金利が上昇し、円相場の支援材料となる。しかし、消費者物価の上昇が続けば通貨の購買力は低下し、円高効果は相殺されやすい。

SMBC日興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストは「期待インフレ率が上昇する中での日銀の利上げは実質金利の引き上げにつながらないため、円買い材料にならない」との見方を示す。

ブレークイーブン・インフレ率は、国債利回りから同じ償還期間の物価連動債利回りを差し引いて算出される。新発10年利付国債利回りからBEIを差し引いて算出した足元の実質金利は約0.2%と、依然として低水準にとどまる。

植田総裁も1日の講演で、実質金利は「極めて低い水準にあり、経済・物価に対して中立的な実質金利を大きく下回っている」と指摘していた。

--取材協力:ジョン・チェン.

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