(ブルームバーグ):米食品医薬品局(FDA)の新たなワクチン承認方針は、従来の規制慣行を大きく変え、米国民の健康と安全を脅かす恐れがある。FDAの歴代局長12人が医学誌への寄稿でこう警告した。
新たな枠組みは、FDAのワクチン部門トップであるヴィナイ・プラサド氏が先週送った内部メールで示された。同氏は、新型コロナワクチン接種が原因で子ども10人が死亡したと証拠を示さずに主張し、今後はワクチンに対してより厳格な基準を適用する方針を示した。また、同氏の見解に同意しない職員は退職すべきだとの考えも示唆した。
過去30年強にわたり民主・共和両党の歴代政権でFDAを率いた元局長らは医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)への寄稿で、「これらの措置と、それが一方的に導入される手法は公益を損なう」と指摘し、「FDA職員の大量退職を含む、一連の憂慮すべき変化で新たな事例であり、FDAの体制と米国民の健康・安全の両方を弱めかねない」と警鐘を鳴らした。
元局長らは寄稿文で、トランプ第2次政権下で進むFDAの方針転換を厳しく批判。新たな枠組みでは、急速に変異する呼吸器ウイルス向けワクチンを迅速に調整することが難しくなるとの見方を示した。
ワクチンで予防可能な疾患について、新たな変異株ごとに既存ワクチンの大規模臨床試験を実施することは現実的でなく、急速に変異するウイルスについてはなおさらだと指摘した。長期で高コストの臨床試験は、流行するウイルスに最適化したワクチンの開発を遅らせる恐れがあるという。
また、子どもへの新型コロナワクチン接種に関する安全性シグナルとされる事例が、免疫不全の人や高齢者など脆弱(ぜいじゃく)な層のワクチン接種を大きく制限すべき根拠になるのか疑問を呈した。
トランプ政権はケネディ米厚生長官の下でワクチン政策を転換してきたが、今回の内部文書もこうした動きの一つだ。政権は新型コロナワクチンの推奨を一方的に変更し、承認に追加の臨床試験を義務付けたほか、諮問委員会を構成する専門家を解任し、子どもの定期予防接種の実施方法を変えることも議論している。
原題:Former FDA Commissioners Raise Alarm Over New Vaccine Policy (1)(抜粋)
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