米ルイジアナ州のクレセント・カンナはここ3年ほど、ヘンプ(麻の一種)由来の大麻成分テトラヒドロカンナビノール(THC)入り炭酸飲料を販売している。

サワーウオーターメロンやストロベリーライム、ジンジャーレモネードなどさまざまなフレーバーがある。

発売当初は1缶(12オンス=約355ミリリットル)当たりTHC含有量を5ミリグラム(mg)または10mgに抑え、多くの消費者にとって「程よく酔える」レベルだった。

しかし今、同社の販売ランキングのトップは、1缶50mgものTHCを含むストロベリーレモネードだ。ジョー・ゲリティー最高経営責任者(CEO)は「作るそばから売り切れ、すぐに人々が求めているものだと分かった」と話す。

クレセント・カンナのような高濃度THC飲料を手がけるブランドが増え、急速に市場が拡大している。通常の大麻から作られる飲料の販売が専門店(ディスペンサリー)に限られるのに対し、ヘンプ由来製品はより広く流通している。

「カントリップ」や「サイクリングフロッグ」といったブランドの50mg入り缶が、食品スーパーやコンビニエンスストアで普通に売られている。

さらに「St. Ides」や「CQ」のように、1缶に100mgものTHCを含む炭酸飲料を販売するブランドもあり、多くの州でビールやワインと同じ売り場で購入できる。

規制上のTHC摂取量を超えないよう「1缶=複数回分」と解釈して販売する企業もあるが、実際に1缶を12回に分けて飲む人はほとんどいない。これらは「強い酩酊」を狙った飲料だ。

一方で、この市場の存在自体に反対する業界も多い。アルコール業界団体や合法大麻産業は、ヘンプ由来THC飲料を直接的な競合と見なし、議会に規制強化を求めてきた。

その結果、トランプ大統領が11月半ばに署名した歳出法案に大半の「酩酊性ヘンプ製品」を禁止する条項が盛り込まれた。この禁止は発効まで1年の猶予があり、業界は存続をかけて新たな規制の枠組みを探っている。

抜け穴

禁止が実施となれば、高濃度製品の販売が終わる可能性があり、ファンやメーカーはこれに強く反発している。

確かに低濃度製品を多く飲めば同じTHC量を摂取できるが、ウイスキーからビールに切り替えた経験がある人なら、1杯当たりの濃度の違いがどれほど体験を左右するか分かるだろう。

「顧客はこの製品を愛している。過干渉な政府に何を飲むか決められたくない」とゲリティーCEOは話す。

大麻飲料の売り上げは米大麻市場の約1%に過ぎないが、2018年の農業法がヘンプを連邦の規制対象から外して以来、急成長している。

規制緩和はもともと産業用ヘンプの利用拡大を目的としていた。だが、州法で禁止されていない限り、THC入り製品が合法的に流通できる抜け穴となった。

その結果、約300億ドル(約4兆7000億円)規模の米大麻市場は、ヘンプ由来のグミや飲料など「酩酊性」製品を含め拡大している。

JPモルガンのリポートが引用したユーロモニターのデータによると、ヘンプ由来THC飲料の売上高は25年に約14億ドルに達する見通しだ。

特に高濃度製品の伸びが著しく、フィール・グッズ・インサイツの調査では、10mg以上を含む飲料を購入する消費者の割合が過去2年で18%増え、現在は購買者全体の60%を占めるという。

こうした飲料がスーパーやコンビニで買えることが市場拡大の鍵となった。ビール売り場に並ぶTHC飲料は、ディスペンサリーに入りにくい層を新たに取り込んでいる。ビールとスナックを買うついでにTHC炭酸飲料を試す心理的ハードルは低い。

ヘンプ飲料業界団体へンプ・ベバレッジ・アライアンス(HBA)のクリストファー・ラックナー代表は「ビールやワインのように楽しめるようできており、消費者を混乱させたり欺いたりする意図はない」と言う。

HBAは適切な飲み方を啓発しており、低用量から始めて自分の体の反応を確かめることを勧めている。「長期的には、10mg程度がビールのアルコール度数5%に相当し、消費者が自分の体験を調整する目安になる」とのことだ。

コスト効率

しかし、消費者の多くは10mgでは満足していない。飲料業界を取材し自身のニュースレター「フィンガーズ」に記事を掲載しているデーブ・インファンテ氏は「50mgや100mg製品を導入した途端、低用量製品の売れ行きが止まる」と指摘する。

一方、アルコール業界では、ノンアルコール製品が人気を集めても、高アルコール飲料の販売は依然好調だという。

フィール・グッズ・インサイツの主任アナリスト、ケイト・バーノット氏によれば、いわゆる「レガシー」層、すなわち大麻に慣れたユーザーが高濃度飲料を求めているという。同氏はTHC飲料の主な用途は「リラックスや感情的な安らぎ、睡眠」であり、必ずしも社交目的ではないと説明する。

価格上昇が続く中で「コスト効率よく酔える」意識も広がっている。ケンタッキー州のエマ・リードヘスターさんは、インディアナで高濃度飲料を試し「50mg入り1缶でソファから動けなくなった」と打ち明け、「日常的に飲むには強過ぎる」と語った。

今後1年、禁止施行に間に合うように、業界関係者とその支持者らは酩酊性ヘンプ製品の存続を可能にする法整備を急ぐ。

HBAは現在、THC飲料の1容器の上限を10mgとするロビー活動を展開している。ラックナー氏は「州や企業が規制や課税に取り組んできた取り組みを、連邦政府が認める」と期待していると述べている。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:Weed Drinks That Get You Super High Are in Lawmakers’ Crosshairs(抜粋)

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