(ブルームバーグ):米株式市場では10-12月(第4四半期)に入り新規上場銘柄のリターンが悪化している。暗号資産(仮想通貨)急落で同セクターの銘柄が大きな打撃を受けており、近く上場を目指すデジタル資産運用会社グレースケール・インベストメンツや暗号資産カストディアン(保管機関)のビットゴー・ホールディングスなどにとっては逆風が強まっている。
新規株式公開(IPO)で5000万ドル(約78億円)超を調達した企業(クローズドエンド型ファンドや特別買収目的会社(SPAC)などを除く)の株式リターンは今四半期に平均で5.3%低下。S&P500種株価指数の0.9%上昇とは対照的だ。この期間に上場した暗号資産関連の5社は平均で31%低下している。
こうした環境下で、11月13日に申請したグレースケールや、9月19日に申請したビットゴーのIPOがどのような評価を受けるかが焦点となっている。
IPOXシュスターの創業者ジョセフ・シュスター氏は「暗号資産は投資家が多大な損失を被っている分野であり、最も敬遠される業種になるだろう」と述べた。
同氏は、企業が12月の上場を見送る必要はないものの、価格設定の期待を下げざるを得ない可能性があると指摘する。

暗号資産関連IPOの明暗
10月初旬に始まった暗号資産の価格急落で、デジタル資産から1兆ドルを超える時価総額が消失した。ただ、それ以前から暗号資産関連IPOの評価はまちまちだった。
ウィンクルボス兄弟が率いる暗号資産交換大手ジェミニ・スペース・ステーションの株価は、9月のIPO価格(28ドル)から同月末までに14%下落。オンライン取引プラットフォームのEToro(イートロ)は、5月の上場から9月末までに20%余り下げた。
相場急落前に堅調だった銘柄も打撃を免れなかった。トム・ファーリー氏率いる暗号資産交換業者ブリッシュは8月の上場後、10月初め以来の下げ幅が38%に達した。6月初旬の上場時に個人投資家の人気を集めたステーブルコイン発行企業サークル・インターネット・グループは、同じ期間に株価がほぼ半減した。
もっとも、ブリッシュ、サークルに加え、ブロックチェーン融資プラットフォームのフィギュア・テクノロジー・ソリューションズの株価は、依然としてIPO価格を上回っている。
「サンタ・ラリー」に期待
バンカーは感謝祭からクリスマスまでの短い期間にさらなるIPOを成立させようとなお意欲的だが、すでに断念した企業もある。ベビー・キッズ向け食品を手がけるワンス・アポン・ア・ファームPBCのジョン・フォーレイカー最高経営責任者(CEO)は、米政府機関閉鎖の影響で「支障が出た」として、IPOを2026年に延期すると23日のリンクトイン投稿で明らかにした。
暗号資産関連企業を含め、年末に向けたIPO市場の健全性は、市場が「サンタクロース・ラリー」を迎えるかどうかに左右されそうだ。
コロンビア大学ビジネススクールの非常勤教授、デービッド・エリクソン氏は「既存のポートフォリオで苦戦している投資家は、よほどユニークなものでなければ新たな案件に熱狂しないだろう」と語った。
原題:Crypto Crash Weighs on US IPOs as Candidates Push Out Timing(抜粋)
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