過去に損失を被った苦い経験を持ちながら、外国為替証拠金取引(FX)を行う日本の個人投資家は再びその通貨に買いの手を伸ばしている。トルコリラだ。

トルコリラ紙幣

日本との金融政策サイクルの違いやトルコの政情不安などを背景に今年のトルコリラ相場は対円で17%下落しているが、トルコの3カ月物先物から算出されるリラの利回りは依然日本を30%ポイント超上回り、圧倒的な高金利を狙ったFXトレーダーらの賭けの対象になっている。

東京金融取引所によると、トルコリラ・円の証拠金取引の未決済建玉は12日時点で約90万枚と、100万枚を超え史上最高だった3月の記録に接近。ただ、金額ベースでは328億円と、トルコリラ安の影響で建玉の規模に比べると目減りしている。

トルコリラは長年、世界で最も変動の激しい通貨の一つで、今後の値動きや材料次第で一気に強気のポジション(持ち高)を組む日本のFXトレーダーらを窮地に陥れかねない。さらに、米ドルやユーロなど主要通貨に対し下落基調を強める円相場の動向に日本の通貨当局は警戒感を強めており、将来的に為替介入による円の急騰リスクにさらされる可能性もある。

みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは、トルコリラは日本の個人投資家が最も手を出すべきではない通貨だと警鐘を鳴らす。

FXトレーダーが過去の失敗を思い出すにはそれほど時間はかからない。エルドアン大統領の政敵で、トルコ最大の都市であるイスタンブールのイマモール市長が汚職容疑で拘束された3月、トルコリラは1日で最大11%急落した。トルコリラ買い・円売りポジションも26%急減し、減少率は2018年以降で最大。これは、日本の投資家が損失確定のためにトルコリラを売らざるを得なかった状況を示す。

兵庫県在住の会社役員、雅裕さん(41)はトルコリラの対円での大幅な反発は想定していないが、スワップポイントと呼ばれる両通貨間の金利差で発生するFX取引特有の利益は「保有期間が長ければ長いほど出せる」と言う。

同ポイントが為替差損を上回るタイミングで決済するため、トルコリラ投資で損失が発生したことはほとんどないとも説明。雅裕さんはプライバシー保護のため、名前だけの公表を条件にブルームバーグに対し語った。

ブラジルレアルなど円キャリートレードの対象となる他の高金利通貨でも今年、スポット価格のパフォーマンスはトルコリラを上回るケースも見られたが、金利水準は総じて低い傾向にある。

「スノーキー」のハンドルネームで知られるインフルエンサーの小手川征也さん(52)は、「メキシコペソや南アフリカランドではトルコリラがもたらすリターンは得られない」と述べ、約300万円相当をトルコリラに投資していると明かす。最近では利益の一部をタイ・プーケット島への旅行費用に充てた。

トルコリラにとって、同国内の慢性的なインフレや不安定な政治情勢は引き続きリスクだ。24年半ば以降のインフレ率の鈍化を受け、トルコ中央銀行は10月に3会合連続で利下げしたものの、足元ではインフレが再加速する兆しも見えるなど先行きを見通しづらい状況にある。

加えて円が対ドルで156円台と約10カ月ぶりの安値、対ユーロでは180円台と過去最安値を更新しており、政府・日本銀行が今後円買い介入に踏み切ると、高金利通貨から一気に資金が流出する可能性も否定できない。金融サービス会社のイーブリーで市場戦略責任者を務めるマシュー・ライアン氏も、「キャリートレードの主な脅威は日本の通貨当局による為替介入だ」と言う。

もっとも、雅裕さんは近い将来に介入があると予測した上で、介入実施前にポジションを解消し、トルコリラが下がったところで再度買いたいとしている。新潟県在住の会社員でFXトレーダーの貴則さん(42)は、過去にトルコ市場の暴落で損失を被った経験があるが、現在は再びトルコリラを買い、過去の損失は既にプラスに回復したと説明。「キャリートレードに非常に良い環境だ」と語った。

豪ATFXグローバル・マーケッツのチーフアナリスト、ニック・トウィデール氏は日本の通貨当局が為替介入に踏み切る可能性は問題だが、「友人や同業者が30%以上のリターンを得ているのを見れば、取引サイクルの終盤であっても追随するだろう」と予測している。

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