関わりたいのに関われない心理~関係人口を阻む安心の非対称
この関係人口をめぐる分析結果の背景には、関わりを育むための休暇や資金的余裕といった条件に加え、関係を持ちたいと感じる人々の心理的な要因もあるとみられる。
徳島県神山町の「ドロップアウト」の例でも、地域社会が自律的・創発的に動くほど、参加者には一定の外向性や自己効力感(自分の能力への確信)が求められる傾向が観察されていた。
その結果、もっとライトに関わりたい層や、女性の発言にもあったような気質の穏やかな人々が「参加しづらい」構造が生じやすく、交流人口と関係人口の谷間を広げかねない恐れがある。
この点については、社会心理学の先行研究でも似た傾向が示されている。
たとえば、幸福感(主観的ウェルビーイング)は、支援を提供されること自体よりも、「自分に対する支援を期待できるという安心感」の影響を強く受けることが知られている。
すなわち、幸福をもたらすのは支援行為そのもののみならず、支援してもらえるという確信であるということになるが、関係人口や移住の文脈でいえば、受け入れられている、役割を持てていると自分自身が感じられることが、地域や関わりにおける安心や幸福感を左右するとも言える。
この観点からすれば、今後に向けて「関係の安心」を感じさせる仕組みの構築、すなわち関係の量のみならず、その質が問われているとも言えるだろう。