合計特殊出生率の高さと出生増減(少子化)には、自治体間でみて「相関関係がない」。つまり、出生率比較による少子化議論は統計上、無効である。
県によっては、出生減が激しいエリアほど出生率が高い負の相関のケースまでも出てきている。
そのような状況の中で、出生率ではない少子化指標は何か、そして、2024年において、少子化はどの都道府県において深刻なのか、今月公表された厚生労働省の最新データ(確定値)をもとに解説する。
人口減少対策が正しく行われるためには、脱・出生率比較と、出生率と出生減が無相関となる状況をもたらしている原因へのアプローチが何よりも大切になってくる。
自治体によっては「過去の誤った出生率解釈に基づく少子化対策をいまさら引き下げられない」とばかりに、政策転換にかたくなになる、あえて目を背ける首長もいるようだが、多くの自治体人口の未来が風前の灯火にある今、潔い決断のもと、政策の思い切ったちゃぶ台返しができる首長こそが、「自治体人口の真のガーディアン」となるだろう。
出生率ではなく出生「数」減少率こそが真の少子化指標
1|若年社会増減が出生増減に直結
合計特殊出生率の高低では都道府県(さらには市区町村)の少子化度合いを測定・評価することはできない。
では少子化をどのように測定するべきなのか。結論から言えば、エリア間で比較をしたい場合はシンプルに「出生数の減少率」が指標である。
10年前に比べてそのエリアで生まれる子どもが半減したエリアと8割維持しているエリアでは、8割維持しているエリアのほうが少子化していない。当然のことにも関わらず、看過されてきた測定法である。
女性の移動で簡単に乱高下する出生率がなぜここまで執拗に愛用されてきたのか不思議でならないが、それくらい、日本は人口問題に対して、EBPMではなく情動論で向き合ってきたのだろう。
田舎のほうが子どもはきっと多く生まれるはず、東京砂漠、といった、人口高齢化がもたらす昭和ノスタルジーへの憧憬も、科学的な根拠を求める心を鈍らせてきたように感じている。
そして、この出生数の増減率に大きな影響を現在統計的にもっているのは社会増減(移動による人口純増減)である。
現在の日本の人口移動は20代前半女性の就職移動がけん引しており、ゆえに社会減で劣位のエリアは、「婚姻減→出生減」から自然減に直結し、自然減でも劣位となるという構造である。
都道府県間で5年単位にて測定した両データの相関係数は0.8となっており、いわゆる社会減を担当する地方創生政策と地元の少子化を担当する地域少子化政策はまさに「運命共同体」状態にある。