11月の小学校受験シーズン、都心では共働きで高収入の「パワーカップル」世帯が受験に臨む姿が目立つ。かつて限られた層のものと見られた小学校受験は、教育投資への関心が高い共働き世帯にも広がっている。

これらの世帯は「時間をお金で買う」発想で外部サービスを活用し、教育投資を軸に暮らしを組み立てているのが特徴だ。幼児期から始まる受験準備には塾・家庭教師費用に加え、面接服や写真撮影、家事代行など間接的支出も含まれる。

教育投資は親の主体性と同時に安心を外部に委ねる側面を持つ。
こうした動きは教育格差を広げる懸念がある一方、家事や介護など教育以外の分野にも波及し、共働き世帯全体の暮らし方に影響を与える可能性がある。

小学校受験シーズンの到来

11月の澄んだ空気の中、都心では紺色のスーツ姿の親子が並んで歩く姿を見かけるようになります。

面接や試験に臨む子どもたちは少し緊張した面持ちで、親は子どもと手をつなぎながら、もう一方の手には小ぶりの式典用バッグと大きめのサブバッグ。こうした光景は、小学校受験シーズンの風物詩とも言えるでしょう。

かつて「お受験」は、由緒ある家柄や経営者層、医師や弁護士といった専門職に代表される、ごく一部の限られた層のものと見られていました。さらに、母親が専業主婦であることが前提とされる傾向もありました。

しかし今は、その様相が変わりつつあります。共働きで高収入のいわゆるパワーカップル世帯が、教育投資への熱心さを背景に、その一つの選択肢として小学校受験を考えるようになっているのです。

それに伴って、学校側も放課後の学童保育に対応したり、お弁当の業者サービスを導入するなど、共働き世帯を意識した対応を見せています。

増えるパワーカップル、その教育投資熱の高さ

パワーカップル世帯は、世帯年収1,500万円を超える共働き家庭を指すことが多いようです。

たとえば、夫婦ともに年収700万円以上の共働き世帯数を見ると、2024年で45万世帯。共働き世帯全体のわずか2.9%ですが、近年は増加傾向にあります。

しかも、そのうち6割超が子育て世帯であり、教育や子育て関連の消費に直結しやすい層が多いと言えるでしょう。

こうした世帯は夫婦ともに高学歴で、専門職や管理職に就いているケースが多く、仕事に打ち込みながら子育ても両立させようとしています。

特徴的なのは「時間をお金で買う」という発想。忙しさの中で自分たちだけで抱え込むのではなく、外部サービスを積極的に利用します。

たとえば、習い事の送迎をベビーシッターに依頼したり、家事をアウトソースしたり。そうして生まれた時間で、親子で過ごす時間の質を高めたり、教育への関わりを深めたりしています。

なかでも教育投資は、子どもに将来の選択肢を広げてあげたいという思いから最優先の支出と位置づけられているのではないでしょうか。

実際に世帯年収別に小学生の習い事費用を見ると、世帯年収が高いほど増える傾向があります。私立小学校に通う子どものいる世帯年収1,200万円以上の世帯では年間約90万円に上ります。