2 社会不安の高まり~物価高騰による足元の苦境、生活がよくならないという将来不安~

今回の参院選では、国民民主党と参政党が現役世代の支持を背景に勢力を伸ばしている。

とりわけ、国民民主党は30代以下の若い世代からの支持が厚く、参政党は若い世代に加えて、40代・50代の壮年層にも支持が広がっている。

選挙戦では、いずれの政党も外国人に対して規制強化を掲げ、国民民主党は「外国人に対して適用される諸制度の運用の適正化」を訴え、参政党は「日本人ファースト」を掲げて、外国人の受け入れに批判的な立場を取ってきた。

ただ、これら政党の支持層である20代・30代の若い世代は、どちらかと言えば外国人に対して比較的寛容な世代であったという点は注目に値する。

この層が外国人規制を強化する政策を支持するようになるには、何らかの合理的な根拠が必要になる。そこで考えられるものとして挙げられるのが、インフレによる足元の経済苦境と将来見通しの悪化である。

足元の経済状況をみると、インフレが国民生活を圧迫している。

2025年7月の消費者物価上昇率は、現実の購買活動により近いとされる「持家の帰属家賃を除く物価指数」で前年同月比+3.5%と、2024年12月以来4%近い伸び率を続けている。

今回のインフレは、食料品やエネルギーで値上がりが大きく、所得が低い層への影響が相対的に大きいといった特徴がある。

足もとでは、不動産価格も値上がりし、その流れは相対的に上がりにくいとされる賃料にも波及している。

とりわけ、首都圏の家賃上昇率は大きく、2021年以降で比較すると、単身者向け物件は約2割、ファミリー向け物件で約4割上昇している。

そうした中で、名目賃金を消費者物価で割り引いた実質賃金は伸び悩み、実持続的・安定的なプラス化の見通しも後づれし、経済的なゆとりと見通しが持てない人が、現役世代を中心に増えている。

20代・30代の若い層は、不動産価格や家賃が上がる中で、将来自分たちが望む暮らしができないのではないかといった不安を感じやすく、外国人による不動産投資が値上がりの要因であるという見方を受け入れやすい。

また、40代・50代の壮年層は、就職氷河期世代に重なる層であり、不本意非正規雇用の割合も高い層である。

派遣社員など非正規で働く層は、外国人労働者と競合が発生する可能性が相対的に高く、事実の検証は必要であるにしても、仕事を奪われる、賃金上昇が妨げられるという理論が、理屈上は成立する。

こうした不安や不満が、住宅取得や雇用獲得で潜在的に競合相手となり得る外国人と結びつき、反発や不安が強まって行ったとみることができる。