はじめに~単身世帯消費は「住居」「教養娯楽」が多い、暮らしの実態から読み解く多様なニーズ
単身世帯の家計収支と消費構造について分析したところ、可処分所得では、就労環境の改善などを背景に若年女性で大幅な増加が見られる一方、壮年女性ではコロナ禍の影響を比較的強く受けた様子がうかがえ、雇用面での脆弱性が浮き彫りになった。
消費支出では全体的に2020年を底に回復傾向にあるものの、長期的には消費性向の低下が続いており、特に壮年女性では回復の遅れが目立った。
消費構造については、単身世帯は二人以上世帯と比べて「住居」や「教養娯楽」の割合が高く、年齢や性別によって異なる消費パターンを持つことが明らかになった。
これらの分析から、単身世帯には経済力向上により新たな消費市場の牽引役となる可能性を秘めた層がある一方で、雇用の不安定さから経済的脆弱性を抱える層も存在するという二面性が浮かび上がった。
本稿では、引き続き総務省「家計調査」を用いて、単身世帯の具体的な消費内容を二人以上勤労者世帯との比較を交えながら分析する。
その際、若年・壮年の勤労者世帯と、60歳以上は勤労者と無職世帯を合わせた全体に注目する。
特に、家族世帯との違いが大きいと予想される食生活、住生活、教養娯楽といった暮らしの実態に着目し、年代別の消費特性の違いや、デジタル化の進展、価値観の多様化といった近年の社会環境の変化が単身世帯の暮らしや消費にもたらした影響についても考察を深めていく。