2023年度特定健診の実施状況等のデータに基づき、メタボリックシンドローム(以下、メタボ)該当者・予備群の課題を考察し、今後の対策について4つの視点から私見を述べる。
メタボ該当者の割合は高水準・横ばい傾向にある。男性は女性の3倍で、平均して4人に1人が該当する。男女ともに年齢上昇に伴い割合は高まり、男性の70~74歳では約35%に達する。
保険者別では、市町村国保でメタボ該当者・予備群の割合が高く、退職等に伴い被用者保険からシニア層が移行してくることが背景の一つと考えられる。
また、メタボ該当者・予備群のうち、高血圧や糖尿病等に係る複数の治療薬を服用する人の割合も増加傾向にある。
2023年度の特定健診実施率は59.9%に留まり、国の目標である70%には届いていない。約4割が未受診という状況の下、糖尿病のように自覚症状の乏しい疾患の早期発見には、健診が極めて重要といえる。
これらの課題を踏まえ、メタボ該当者・予備群の割合を効果的に引き下げるための4つのアプローチを論じる。
第1に、性・年齢に着目した対策の強化である。男性の飲酒や喫煙、女性の代謝・ホルモン変動といった性差を考慮し、メンタルヘルス支援も含む行動変容を促す介入が重要だ。
第2に、ライフステージに応じた保険者のシームレスな支援体制の構築である。退職等により健康管理の担い手が企業から地域へ移行する際にも支援が途切れないよう、健康データ連携など横断的なプラットフォームの構築が求められる。
第3に、薬剤服用者に対する生活習慣改善アプローチの強化である。多職種が連携し、薬物療法と生活習慣の両面から改善を促すとともに、教育プログラムやアプリ等を活用した支援が不可欠だ。
第4に、国の目標を大幅に下回る特定保健指導の実施率向上である。こうした取り組みを一体的に推進することは、わが国における「健康長寿・エイジレス社会」の実現と、社会全体の活力向上に資するものと期待される。
メタボリックシンドロームとは
厚生労働省より「2023年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況について」が公表された。
「特定健康診査・特定保健指導」(以下、特定健診・特定保健指導)は、2008年4月から、40歳以上75歳未満の医療保険の加入者を対象に、予防・健康づくりに資する新たな仕組みとして導入された。
メタボリックシンドローム(以下、メタボ)に着目した特定健診によって生活習慣病のリスクを早期に発見し、その結果を踏まえて特定保健指導を行う。
これにより、運動習慣や食生活、喫煙といった生活習慣の見直しを促し、内臓脂肪の減少等を通じて生活習慣病の予防・改善につなげる。
なお、メタボ該当者・予備群は、特定健診において腹囲や追加リスク等の状況に応じて判定される。
今回、2025年5月に公表された最新データ「2023年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況」等も踏まえ、メタボ該当者・予備群の課題について考察するとともに、メタボ対策に向けた私見を述べる。