世界最大の乳製品輸出国であるニュージーランドの搾乳場では毎日2回、牛のふん尿を洗い流す作業が行われ、使われた水は大きな人工池に排出されている。

この池の水を再利用しようと、地元の科学者キース・キャメロン氏とホン・ディ氏は、液体と固体を分離するために下水処理で使われるポリ硫酸鉄を添加する実験を始めた。実験は成功したが、想定外の発見があった。廃水からのメタン排出量が90%余りも減少していたのだ。

ディ氏によると、家畜のメタン排出の約10%はふん尿が占めている。メタンは20年間で二酸化炭素の80倍余りの影響力を持つとされる温室効果ガス。大規模農場では「嫌気性消化槽」と呼ばれる巨大な密閉タンクに蓄積しメタンを回収しているが、設置には数百万ドルのコストがかかる。中小規模の農場では同様の対策が困難だ。

今回の技術では、ポリ硫酸鉄を投入することで、メタン生成菌よりも硫酸還元菌が優勢となり、メタンの生成が抑制されるというメカニズムが働いた。その結果、農家が長年抑制しようとしてきた温室効果ガスが大幅に減少した。

この技術は「EcoPond(エコポンド)」の名称で開発され、ニュージーランドの大手乳業協同組合フォンテラ・コーポラティブ・グループおよびシンレイト・ミルクに加盟する約250カ所の農場で試験導入が始まっている。フォンテラは2030年までに畜産由来排出強度を18年比で30%削減する目標を掲げており、この技術がその達成に寄与する見込みだ。

農業者団体レイブンズダウンの子会社「アグニション」が技術の商用化を進めているが、現時点でコスト見積もりは公表していない。試験導入の資金はレイブンズダウンのほか、米マースやスイスのネスレなどの支援プログラムを通じて提供されている。

レイブンズダウンのマイク・マニング最高科学責任者は、「加盟している協同組合がメタン削減を支援している酪農家にとっては、手の届く価格帯になる可能性が特に高い」と述べた。

キャメロン氏によれば、この技術によりニュージーランドの各酪農場からの排出量を7-9%削減できる可能性があるという。農業は同国経済の基盤であり、輸出の約80%、温室効果ガス排出量の半分余りを占めている。

原題:Scientists Stumble Upon Way to Reduce Cow Dung Methane Emissions(抜粋)

--取材協力:Tom Redmond.

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