(ブルームバーグ):米国人の飲酒量はこのところ明らかに減っている。背景には、健康志向の高まりや減量薬の普及に加え、大麻人気の拡大もあるとされている。
酒類市場の調査会社IWSRによると、2025年のアルコール消費量は、世界の主要市場で前年比2%減少した。米国では減少率が5%に達し、落ち込みはさらに大きかった。BNPパリバのアナリスト、ケビン・グランディ氏は、2026年もアルコール消費量が最大4%減少する可能性があると試算している。
もっとも、一部の業界関係者は、こうした数字が飲酒量の恒常的な減少を示すとの見方に異を唱えている。

バークレイズのアナリスト、ローレンス・ワイアット氏はインタビューで、減量薬や健康志向、大麻が飲酒量に及ぼす影響は「過大評価されている」と指摘。むしろ、原因は「経済的な苦境」にあると述べた。
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の飲料業界担当アナリスト、クリス・グッドチャイルド氏も、減量薬が「市場低迷の主因ではない」との考えだ。同社のデータによると、肥満症治療などに使われる「GLP-1受容体作動薬」がアルコール需要全体に及ぼす影響は3%未満にとどまる。
健康志向の高まりも、表向きの理由にすぎない可能性がある。IWSRのマーテン・ロデワイクス社長はインタビューで、「酒を飲む余裕がないことを友人にも自分自身にも認めたくない。『少し健康に気を使おうと思っている』と言う方がずっと気が楽だ」と語った。
ウイスキー「ジャックダニエル」を手がける米ブラウン・フォーマンのローソン・ホワイティング最高経営責任者(CEO)はUBS主催のカンファレンスで、米消費者は健康ブームにすぐ飽きることで「有名だ」と発言。そのうえで、GLP-1系薬の副作用にも「いずれうんざりするだろう」との見方を示した。
ただ、同氏のこうした見方は、業績に苦しむ企業の希望的観測にすぎないのかもしれない。BNPパリバのグランディ氏は、企業が飲酒習慣の変化を構造的なものとして捉え、経営戦略にいかに織り込めるかが問われていると指摘。消費者はアルコールの健康リスクをますます敬遠するようになっていると主張している。

飲酒スタイルの変化
それでも足元には明るい兆しもみられる。BCGのグッドチャイルド氏によると、2026年に入ってからは大半の年齢層で飲酒率が上昇し、消費量も安定している。同氏は「こうした傾向が続けば、2027年には転換点が見えてくる可能性がある」と話す。
一方、IWSRのロデワイクス氏は、米国のアルコール消費は今後4-5年はマイナス圏で推移した後、持ち直しに向かう可能性が高いとの見方を示した。同氏は、回復の鍵を握るのはZ世代(1990年代後半から2010年代前半生まれ)の財布だと指摘。IWSRの調査によると、最近飲酒したと答えたZ世代の割合は2023年には5割未満だったが、2025年には7割に上昇した。
若い世代では、飲酒スタイルに変化がみられる。米蒸留酒協会(DISCUS)のクリス・スウォンガー最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「Z世代の消費者は、アルコール飲料との付き合い方を変えつつある」と語った。
そうした新たな飲酒習慣の一つが「ゼブラ・ストライピング」だ。シマウマの縞模様になぞらえ、アルコール飲料とノンアルコール飲料を交互に飲むことをいう。もう一つはRTD(レディ・トゥ・ドリンク)で、缶入りの果実風味カクテルなど、そのまま飲めるアルコール飲料を指す。

こうしたトレンドには課題もある。RTDは酒類業界で成長分野となっているものの、蒸留酒に比べて利益率が低い。RTD市場は競争が激しく細分化も進んでいるため、恩恵を受けやすいのは既に強固な地位を築いたブランドだと、BNPパリバのグランディ氏はリポートで指摘している。
酒類大手がRTD事業への依存を強める際のリスクは、買収したブランドが競争力を維持できるかどうかにある。
グランディ氏は「5-10年先を見据えると、一部の企業は買収したRTDブランドの価値を見直し、減損損失の計上を迫られる可能性がある」と話す。
同氏は例として、ボストン・ビアによるハードセルツァー(炭酸水をベースにしたアルコール飲料)への投資が失敗に終わったケースを挙げた。この失敗により、同社は資産価値の引き下げを余儀なくされ、2021年には投資家の評価も悪化した。
需要回復に向け準備
酒類メーカー各社は需要回復の可能性に備えている。バークレイズのワイアット氏は「現在、多くの企業が米国で投資段階にある」と指摘する。「成長が戻ると見込んでいるため、市場から撤退したくないのだ」という。
酒類大手は、価格に敏感な消費者の取り込みを急いでいる。ディアジオはテキーラブランド「カーサミーゴス」の値下げに踏み切った。レミー・コアントローCEOは最近のアナリスト向け説明会で、より手頃な価格のコニャックを投入する準備を進めていると明らかにした。
また、ブルームバーグ・インテリジェンスのケネス・シェイ氏は、大麻由来成分テトラヒドロカンナビノール(THC)を含む製品に対する連邦レベルの禁止措置が近く導入されれば、一部の消費者がアルコール飲料に戻る可能性があり、酒類業界には追い風になるとの見方を示した。
HSBCのアナリスト、カルロス・A・ラボイ氏は、人工知能(AI)の活用や利便性の向上も重要だと指摘する。例として、ABインベブが中南米や南アフリカで展開する消費者直販プラットフォームを挙げた。冷えたビールを数分以内に自宅へ配送するサービスだ。
デロイトの小売業コンサルタント、アンドレア・ベル氏は「商品の入手しやすさや信頼性、対応の速さという点で成功の方程式を見いだし、消費者が重視する価値に合わせて事業を変革できる企業が勝者になる」と話した。
原題:Shifting American Alcohol Consumption Reshapes Booze Strategy(抜粋)
--取材協力:Rachel Yeo.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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