「M7」を買わない理由—いい会社≠いい投資先

近年急成長している「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる米国のテック株に対して、オービスは一切投資していません。

その理由について時国氏は興味深い見解を示します。

「いい会社、伸びる会社というのと、いい投資先というのは全く別の概念です。どんなに伸びても、株価がすでにその価値以上についていたら、株価は下がるしかありません」

時国氏はITバブル時代の例を挙げ、「IT革命が起こる」という予測自体は正しかったにもかかわらず、株価は暴落したことを指摘します。

「IT革命が起こるという事象と株価が上がるという事象は、必ずしも一致しなかったのです」

また、成長セクターでは競争が激化し、企業のライフサイクルが短くなる傾向があるとも警告します。

「魅力的で成長するセクターは新規参入者を誘引するので、競争が高まっていきます。プロダクトライフサイクルやカンパニーライフサイクルが短くなりがちなのです」

本質的な割安投資の実践—「コントラリアン」の精神

オービスの投資手法の特徴は「コントラリアン」という考え方です。これは単なる「逆張り」ではなく、「自分の頭で考えて価値がどこにあるのかを見極める」姿勢を指します。

「割安であるという現象があった上で、逆張りのメンタリティがあるからこそ投資対象として実現できます。例えば100の価値があるのに50で評価される時は、大抵何か大きな問題が起きている時です。そこで入っていくためには、このコントラリアンの精神が必要です」

時国氏によれば、投資で難しいのは分析そのものではなく、このコントラリアンのメンタリティを維持することだと言います。

「株価がどう動いたかを追っていると間違えるので、企業価値の方をずっと追い続けることが重要です」

結論として、時国氏は個人投資家にも「バリュー投資の視点を持つこと」の重要性を強調します。

単にPERやPBRなどの指標だけで判断するのではなく、企業価値を自分で見極める本質的な割安投資が長期的なリターンを生み出すカギになるのです。

※この記事はTBS CROSS DIG with Bloombergで配信した「1on1」の内容を抜粋したものです。