ワシントンで第2回目の日米関税交渉が行われた。米国側は、自動車関税 25%の引き下げには応じない構えである。日本の自動車市場の公正さについて批判しておきながら、日本からの輸入分への関税引き下げに応じないのでは、交渉にならない。農産物の輸入では、大豆・とうもろこしの拡大を提案した模様だ。自動車関税 25%と相互関税 24%をゼロ近くまで引き下げないのであれば、交渉は時間をかけて急がない方が賢明だろう。
自動車関税引き下げ拒否に石破総理「絶対に飲めない」
5月1日にワシントンで、2回目の日米関税交渉が行われた。赤澤亮正経済再生担当大臣とベッセント財務長官との間での交渉内容は、必ずしも明らかになってはいない。漏れ聞こえるのは、米国側が自動車関税25%を引き下げない方針である。この点に関して、石破首相は「絶対に飲めない」とコメントしている。米国側の意向は、自動車、鉄鋼・アルミの25%は据え置いて、交渉可能な範囲を相互関税の上乗せ分(14%分)だけに絞って交渉する方針のようだ。日本側からみれば、そもそも相互関税24%の根拠すら曖昧であり、合理的説明がつかないことを「非関税障壁だ」とレッテル張りする論法には不満を覚える。例えば、米国側は日本の自動車市場が米国基準を受け入れないことを「非関税障壁」だとみなす。乗用車のウィンカーの表示をオレンジではなく赤も認めろとか、シートベルトの警告音を運転席だけに限定するルールを認めろと迫ってくる。欧州車は、60か国以上が採用する国際共通基準を受け入れている。米国が独自基準を採用するから日本との違いが生じているだけだろう。その点を突いて、日本の非関税障壁だと言うのである。米国がガラパゴス化しているに過ぎない。米国側より基準が厳しい日本に合わせる方が米国の安全性基準を高めて、Win-Winの関係になるはずだ。元来、米国車が売れないのは、乗用車が大型で、燃費が悪いなど日本人の嗜好に合致しないことが一因だろう。それを改めずして、日本のルールがおかしいという論理こそ、受け入れ難い。
何よりも、自動車関税を全く引き下げずに、相手国の自動車市場だけが不公正だと指弾するところも違和感が大きい。これでは、相互の交渉が成り立たないではないか。このように、第2回目もトランプ政権と日本側との対立点ばかりが目立った。石破政権にとっては、7月に参議院選挙を控えているから、安易にトランプ関税に屈する印象を国民には与えられない図式である。
筆者は、赤澤大臣が述べているように「ゆっくりと急ぐ」方針は間違っていないと思う。もしも米国側が24%(あるいは25%)をゼロ近くまで引き下げる用意があれば、関税交渉を急いだ方がよいと考える。反対に、自動車関税25%をそのままにして、さらに相互関税10%も残すつもりであれば、関税交渉はゆっくりと時間をかけて急がずに進める方がよい。トランプ大統領は、交渉に関して時間はあるので、「急いでいない」と述べているが、これはいつものトランプ語録である。トランプ大統領の真意は、こうした発言と全くの逆であることが多い。つまり、トランプ大統領はかなり焦っていて、早期に合意を勝ち取りたいというのが本音であろう。
第2回交渉までのところをみる限り、筆者は「ゆっくりと急がずに」交渉を進めて、自動車関税25%の引き下げ余地を導いた方が得策だとみる。米国におもねって拙速になるのは禁物だと思える。