予想以上にハト派だな、と思いました。日銀は、トランプ関税を受けて、成長や物価見通しを大きく下方修正しました。形の上では、「見通しが実現していけば、引き続き、政策金利を引き上げる」との表現を残したものの、植田総裁の説明を、聞けば聞くほど、次の利上げのシナリオなど描けず、利上げ局面は、もう終わったのではないかと感じさせました。

成長・物価見通しを大幅下方修正

日銀は1日の政策決定会合で、金融政策の現状維持を決めると共に、4月時点の新たな経済・物価見通し、いわゆる展望レポートを発表しました。トランプ関税政策による貿易・経済の停滞を受けて、25年の経済成長率を、1月時点の1.1%から0.5%へと0.6ポイントも大幅に下方修正、26年度についても、1.0%から0.7%へと引き下げました。

また消費者物価についても、経済成長の鈍化を受けて、25年度を2.4%から2.2%に、26年度を2.0%から1.7%にそれぞれ下方修正し、27年度にようやく1.9%と、物価目標の2%が視野に入るという見通しを示しました。

物価目標の達成を、これまでより1年、後ずれさせた形です。

基調的物価は「伸び悩み」

今回の見通しのキーワードは、「基調的物価上昇率の伸び悩み」です。植田総裁は会見で「いったん足踏みする」と表現しました。

基調的物価上昇率とは、消費者物価上昇率の内、為替や国際的な市況など一時的な変動を除いた実力ベースの物価上昇率のことで、賃金上昇や国内需要の増加によってもたらされる物価上昇を、概念的に表現したものです。

植田総裁はかねがね、この基調的物価上昇率が、「1%を越えてはいるものの2%には依然達していない」としながらも、「2%に向けて着実に上昇している」ので、「それに応じた金利の調整を行っていく」と説明してきました。

つまり、基調的物価の確かな上昇こそが、利上げの根拠だったのです。それが今後は「伸び悩む」というのですから、利上げの具体的なスケジュールは描けなくなったと、言っているのも同然です。植田総裁は「基調的物価上昇が伸び悩んでいる時に、利上げすることは考えていない」と言明しました。

市場関係者の間では、年内利上げの可能性はなくなったとの受け止めが多いようです。