市場はドルを疑っている
更に言えば、トランプ政権のドルに対する姿勢を市場は測りかねています。貿易赤字解消や製造業復活に向けたドル安志向があるものの、その一方で、中国を始めBRICSなどを念頭に、基軸通貨としてのドルの地位を守ることにも強い拘りを表明しています。
プラザ合意の85年のアメリカは、レーガン政権が旧ソ連と強く対峙した時代です。同盟国の安全保障へのコミットメントを疑う者はなく、多少ドル安が進もうが、強いアメリカへの信認は全く揺るがなかった時代です。アメリカへの信認が同盟国からさえ低下している時代に、トランプ政権がどのように基軸通貨の地位を守れると思っているのか、こちらが聞きたいぐらいです。
日米一致の脆弱な基盤
そう考えてくると、加藤・ベッセント会談での「緩やかな円安ドル高是正」という合意も、脆弱なように思えます。関税戦争が落ち着きを見せない限り、ニュースのヘッドラインで為替が乱高下するリスクは続きます。貿易や投資の停滞も、ファンダメンタルズを反映した為替市場の健全な価格形成を妨げるでしょう。行き過ぎたアメリカの関税政策がインフレ急伸や景気減速を招けば、なおさらです。トランプ不況によって、日銀が利上げできなくなれば、「緩やかな円高」などと言ったシナリオなど、すぐに吹っ飛びかねません。
市場はすでに、そうした脆弱さを見透かしているかもしれません。