管理職はなぜ「罰ゲーム」と称されるのか

最近、よくメディアでは「管理職は罰ゲーム」だとする特集が組まれています。

かつては、管理職への昇進が経済的安定と社会的ステータスの象徴とされていました。当時は勤続年数に応じて昇進していく終身雇用型のキャリアパスが一般的で、「努力すればいずれ管理職になれる」という暗黙の前提がありました。

当時の管理職は報酬や待遇が優遇され、権限も大きかったため、多くの社員が目指すポジションでもありました。

第一生命経済研究所が2025年3月に実施した調査において、会社勤務している非管理職(一般社員)2,927名に「今より高い役職(会社幹部や、管理職など)に就くことを目指しているか」を質問したところ、「目指している」と答えた人が22.2%に対して、「目指していない」と答えた人、つまり昇進を希望しない人が48%と倍以上いる結果となり、管理職を敬遠する層が、かなりいることが伺えます。

この理由としては、まず社内外での越境・副業、フリーランスや起業等の管理職以外の多様なキャリアパスが広がり、相対的に管理職の魅力が薄れていることが挙げられます。

また、近年、各企業で推進されている働き方改革に加え、ハラスメント対策、部下のメンタルヘルスやエンゲージメントへの対応等により、管理職が抱える業務量や責任が増大していることも背景にあります。

一般社員には支給される残業や休日出勤等の手当が無くなるため、場合によっては「役職者と一般職の給与の逆転現象」が起こることもあり、負担や責任が増える一方、昇給幅や手当が見合わないことも管理職の魅力の低下に繋がっていると考えられます。

管理職の負担を軽減する方法は?

管理職の職務のうち、業務進捗管理などの「業務マネジメント」に関わる部分についてはDXが進展するなかで、将来AI等に代替可能な部分も大きいと言われています。

しかし、人材マネジメント(部下の人材育成、メンタルケアやモチベーションアップ、組織風土作り等)については、個別のきめ細かな対応が必要となり、AI代替は当面難しいと思われ、将来管理職不足に陥る可能性も少なくありません。

管理職の負担軽減策として、ある日本企業では管理職の役割をプロジェクト管理、人材育成等に分割し、複数人で分担(マネジメントシェアリング)する、つまり管理職のポストを増やす人事施策を導入しています。

ドイツでは、一部の企業で1つの管理職ポストを2人で分担する「タンデム方式」が導入されています(ジョブシェアリング)。これは育児や介護等と両立して働く短時間勤務の正社員でも管理職を継続できるよう創設された制度で、基本的にスポット運用されています。

管理職の負担軽減は、既存の負担を減らすという局所的な観点だけではありません。各企業が組織構造全体の中で、改めて「管理職」という役割を再定義していくことで、結果的に組織の底上げ、中長期的な企業の成長にもつながるのではないでしょうか。

※なお、記事内の「図表」に関わる文面は、掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください。

※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 総合調査部 副主任研究員 髙宮 咲妃