思い込みには要注意

以上、初項から第5項までは初項1、公比2の等比数列と同じだが、それ以降は異なる形で増加していく数列の例を2つ見ていった。

もちろん日常生活の中で行われる予想や予測は、数学の数列とは異なる。
初項や公比といった限られた情報による単純なやり方ではなく、さまざまな情報をもとに、経験を働かせて予想や予測が行われることが多いだろう。

ただ、経験から見出したパターンや法則を使って、予想が当初5回も当たったら、たとえ合理的な根拠がなくてもそれを信じてしまい、パターンや法則を疑ってかかることは困難になるかもしれない。

かつては計算機の性能の問題から難しいとされていたような複雑な計算が、コンピュータの計算技術の進化により、いまでは実行可能となっている。
数値を使った予想や予測も、簡単にできるようになった。

一般に、数で示されると、人は信じてしまいがちだ。数には相当な説得力がある。
このため、数を使って示されると、たとえ計算根拠の乏しい予想や予測であったとしても、人は簡単に正しいと思い込んでしまう。

その結果、計算機が発達していなかった頃には生じ得なかったような、予想や予測に関するひどい間違いが生じる恐れもある。

経験から得られたパターンや法則をどこまで信頼するか ― ときには思い込みを捨てて、一から考えてみることが必要と思われるが、いかがだろうか。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原拓也)