空き家の掘り起こしのために
これらの空き家活用の事例から空き家の掘り起こしのために有効であると考えられる方策については以下のようなことが考えられる。
1)空き家の所有者に決定権を持たせる
空き家の所有者は、どの活用者でも受け入れるわけではない。一般的なポータルサイトでは活用者の情報がほとんど得られないため、所有者が判断に困る場合が多い。「どのような人が活用するのか分からない」という不安が、所有者が空き家を市場に出さない一因となっている。従って、先ずは活用者による具体的な活用方法等の情報を提示し、それを基に所有者が空き家提供の判断可否ができる仕組みを整える工夫をすることは有効である。これにより、所有者に安心感が生まれ、空き家の市場流通が促進される可能性が高い。
(例)家いちば、さかさま不動産、ナゴノダナバンク
2)売却や賃貸に対して段階を踏むことが出来る
空き家を市場に流通させるという決断は、所有者にとって容易ではない。売買や賃貸を確定していない段階で、物件情報を提供できるような仕組みがあれば、所有者が「(所有物件には)想定以上の需要がある」と認識し、市場に流通させる意欲が高まると考えられる。
(例)家いちば、さかさま不動産
3)地域との繋がりを強く持つ
空き家の所有者に物件を提供してもらうには、所有者との信頼関係が重要である。地域に根差した組織が仲介役となることで、所有者が安心して物件を市場に出すことができる環境が整う。また、空き家活用が地域づくりの一部であると位置づける視点も必要である。さらに、実際に歩いて空き家を探す地道な努力も重要である。
(例)ナゴノダナバンク、神山町、NIPPONIA、暇と梅爺、ヤドカリプロジェクト
4)活用の成果の広報を行う
空き家の所有者は、自分の空き家に活用の可能性があると思っていない場合が多い。そのため、実際の活用事例を広く伝えることで、自分の物件にも可能性があると認識させることが有効である。さらに、実際に活用されている様子を見てもらうことで、所有者から信頼を得ることも期待できる。
(例)ナゴノダナバンク、巻組、暇と梅爺
5)機会を捉える
空き家となる機会は、所有者が相続時や施設への入居時が多い。死因贈与契約や終活における不動産に関する相談等を行い、生前に相続後のことを決めておくことで、相続時のタイミングで、物件を取得できる機会を創出する仕組みを持ち、所有者との円滑な接点と取引が可能になる。
(例)巻組、神山町
「地域資源」としての空き家の価値
本稿では、空き家活用を行っている事業者がどのように空き家の情報を手に入れているかについて整理を行い、空き家の所有者が空き家の情報を市場に流すための方法について検討を行った。今後、これらの取り組みを支える具体的な仕組みや成功事例の普及が課題となる。特に、空き家問題は地域全体の課題であるため、事業者、地域住民、行政が協力し、地域資源としての空き家の価値を最大化することが重要である。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 社会研究部 研究員 島田 壮一郎)