リードオルガン奏者であり、分身ロボット「OriHime」のパイロットとしても活動の幅を広げる松原葉子さん。その穏やかな語り口の奥には、幾多の困難を乗り越えてきた強い意志と、音楽や人との繋がりに寄せる深い愛情が秘められています。進行性の難病と向き合いながら、彼女はどのようにして自らの表現を見つけ、希望を奏でているのでしょうか。その軌跡を辿ります。

死の淵から響いた祈りの叫び…人生の転機

1973年、富山に生まれた松原葉子さんは幼い頃からピアノに親しみ、15歳で教会での礼拝奏楽に携わるようになり、教会音楽の道を志しました。

フェリス女学院大学で音楽を学び、オルガン奏者として各地で演奏活動を行う傍ら、コンサートの企画・制作も手掛けるなど音楽と共に歩んできました。

しかし、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。

幼少期より進行性の難病を抱え、2017年1月には肺炎から呼吸不全を起こし救急搬送。気管切開手術を受け、人工呼吸器を装着することになりました。まさに“命の危機”に瀕する壮絶な体験でした。

松原葉子さん
「1か月以上集中治療室におりまして、何度も危ない状況になりました」

「もし生きることを許されるなら、それはオルガンをまた弾かせてほしいとか、喋らせてほしいとか、そういうことでは全然なく、目の前で懸命に救命してくださる医療従事者の方、一人一人のことを伝えたい、それくらいのことでしか、その時は多分なかったと思うんです。けれども、これで終わってしまうんですか、みたいなことを神様に向かって叫んでました」

その祈りにも似た叫びは、彼女のその後の生き方を大きく方向づけることになります。