市川智英医師:
「体力チェックをしっかりしようということをやっていて、山岳遭難の原因の多くは体力不足というか、その方の体力に見合ってない登山をして疲労の結果、滑落してしまうとか、実際に単純な疲労遭難といって動けなくなっちゃって救助要請というケースもありますけれども」

「登山者検診」は、まさに“登山者のための人間ドック”。

突然死のリスクとなる疾患の有無や体力レベルを調べて、登山に向けたアドバイスを伝え、必要に応じて治療にも繋げるのです。

実際に検診を受けた人の2割弱から、本人が気づいていなかった狭心症や不整脈などの疾患が見つかっているといいます。

市川医師:
「ここはCPX検査室といって、CPX=心肺運動負荷試験という検査で、僕が登山者検診の中で一番重要視している検査を行う部屋になります」

使うのが、自転車型の機械。


ペダルをこぎながら、心電図や血圧などを測ります。

市川医師:
「赤い線が、ペダルの重さ。最初漕いでいない状態で計測して、そのあとだんだんペダルがどんどん重くなっていく」

モニターのグラフには、心拍数や酸素摂取量などの推移が示されます。

登山の指標になるのは…

市川医師:
「緑色のラインになっているところが、『AT』という、ざっくり言うと『有酸素運動能力』みたいな数値」

その人が身体に大きな負担をかけずに、長時間続けることができる運動強度の目安が、AT値(エーティーち)。

METs(メッツ)という単位で示されます。

これを、市川医師が考案した独自の計算式で算出する値と比較することで、どのくらいのペースで登れば身体への負担が少ないかなどが分かるといいます。

例えば、標高2899メートル、八ヶ岳の赤岳に登る場合。


体重70キロの人が8キロの荷物を背負い、コースタイム通り登るのに必要な体力値は、5.62メッツ。

しかし仮に、その人のATが5メッツだった場合、体力が足りていません。

そこで…