定期的に見直したい防災グッズ。食品は何を備えていますか。それは食べて嬉しくなるものでしょうか。広島県竹原市の会社が開発したのは「防災スイーツ」。食品とは畑違いの電気・通信工事業の会社で、きっかけは7年前の西日本豪雨でした。

常温で長期間置いておける「保存食」であるこのフィナンシェ。やさしい色使いのパッケージに包まれています。

RCCウェザーセンター 近藤志保 気象予報士
「見た目は、普通のフィナンシェです。バターのいい香りがします。しっとりとして甘くておいしいです」

つくったのは、竹原市にある従業員15人の会社。電気や通信設備の工事業が専門です。防災スイーツづくりを提案したのは、桑原直社長です。

きっかけは、2018年の西日本豪雨でした。
豪雨は西日本の広い範囲を襲い、県内では153人が犠牲となりました。桑原さんは当時、竹原市で仕事を終えて自宅のある東広島市黒瀬町に帰るまで、見慣れたまちの変わり果てた光景にとまどったそうです。

東工電設 桑原直 社長
「本当に怖かったですね。ここは道ですが、川みたいになっている」

近くの川が氾濫したことで、自宅近くの町内会館に避難しました。そこでの3日間、自治体から支給されたカップ麺や乾パンなどを食べて過ごしましたが、次第にストレスが募っていったといいます。

東工電設 桑原直 社長
「ハートがダメージを受けている状態。そういったところで、ハートを柔らかくできるような防災食があったらいいな、という漠然としたイメージでしかなかったんですが」

甘いものが大好きな桑原さんは、いざというときに食べられるスイーツを自分でつくりたいと考えるようになります。

東工電設 桑原直 社長
「長期保存できる食べ物でまず思いついたのが、カレー。カレーの中身をスイーツに置き換えてしまえば、できるのではないかと」

周囲からの反応は、どうだったのでしょうか。

東工電設 桑原直 社長
「まわりは、この人何言ってるのかな、みたいな。業界の方に言わせても、やってもできるわけがないと言われました」

それでも諦めず、揺るがない思いを伝えて、会社内での理解を得ることができました。