ある母親が背負っていたのは…

逃げ惑っているとき、何メートルか先に何かを背負って逃げる人の姿が目に入りました。「それが何なのか」。何度も目をこらして見たと言います。
大橋和子さん
「何度も何度も見ました。でも首から上が見えない…。赤ちゃんの姿だったんです。それが赤ちゃんだと分かったとき、私は気を失いました」
大橋さんは、この母親が我が子を抱いたとき、どんな気持ちになるのか。想像したその姿が頭から離れず、苦しみました。
大橋和子さん
「頭に入り込んできてどうしても消えない。夢にまで見るんです。とても苦しかった」
気がついた大橋さんに、喉の渇きが襲います。「とにかく泥水でもいい」と水たまりから両手ですくって飲もうとしたときでした。
大橋和子さん
「逃げる途中に見た人たちと同じ姿だったんです。目が、鼻が、口が、どこにあるか分からない、無惨な姿でした。それが自分の顔だと分かったとき、その場でまた気を失いました」
その後、どう逃げたのかは覚えていないといいます。親戚に助けられ、家族と再会を果たすことができました。


































