少年時代の記憶 日常に散らばっていた戦争の爪痕つづる
ーケンちゃんの家の前を通る変わった男がいた。すりきれたゴムゾウリがパッタイパッタイと音をたてていたー

少年時代の記憶をつづった「ケンちゃん日記」。登場人物のなかには、戦争で心に傷を負った人の姿も。戦争は終わっても、日常に散らばる爪痕を描きました。作品集には、新里さんの人生を追った評伝も収録されています。
評伝をまとめたのは、ノンフィクションライター・藤井誠二さん。新里さんとともに各地を歩き、取材を重ねてきました。
新里さんが藤井さんを案内したのは、自身の門中墓。
▼漫画家 新里堅進さん(79)
「見てください、これ。失礼します。弾が、めり込んでいるんですよ」
▼藤井誠二さん
「生々しいですよね」
▼漫画家 新里堅進さん(79)
「だから今、80年前の方にいるわけですよ。時空を超えて」
▼藤井誠二さん
「新里さんは、憑依型の人ですね。例えばいろんな現場に行ったり、ガマに行ったり、それから沖縄戦体験者の方に会ったりすると、そこに漂っている無念のマブイ、無念の思いが先生に乗り移って、先生が自動筆記のように絵を描いていく。まず絵を描くんですよ。人の顔を描くんですね。そこから後でストーリーを考えていくというようなスタイルなので、そういう描き方をするのは、僕の知っている限りでは先生しかいない」