沖縄戦から80年が経ちました。沖縄の80歳以上は、人口の7%です。日本全体でも90%が戦後生まれになり、近い将来、戦後世代しかいない沖縄がやってきます。【戦後80年 #あなたの623】は、胸の奥にしまい込んできた辛い記憶。家族のなかで避けてきた戦争の話題。今しか話せない大切なこと。今だから話せる戦争のことを聞いていく、シリーズ企画です。

6回目は、RBCのOBで県出身の俳優津嘉山正種さんにスポットを当てます。朗読劇を通して沖縄戦を伝え続けてきた津嘉山さん。81歳となった今の心境を語りました。

▼俳優 津嘉山正種さん(81)
「私は1944年生まれで、1945年に戦争が終わりました。当時1歳、記憶は当然ありませんよ」

RBCのOBで那覇市出身の俳優・津嘉山正種さん(81)。

▼俳優 津嘉山正種さん(81)
「爆風が来てよ、壁に洋服吊るしてあるでしょ、それみんなボロボロになるわけ。表を見たら片腕がとれて、『足をけがした』と言いながら老人が歩んでいく、その姿を見ていたという親の話をどんどん聞かされた」

「沖縄戦の記憶を伝えたい」そんな思いで続けているのが、朗読劇です。



【朗読劇「戦世を語る」2018年】
「眠っているかのように見えた艦船の群れが、突如その静寂を破った。地上に向け一斉に砲撃を開始したのである。ドーン!ドーン!」

▼俳優 津嘉山正種さん(81)
「もう基地はいらないよ、戦争はたくさんよってみんな沖縄の人はしみじみ思っている。及ばずながらだけど、何とか『考える時間を』と思うわけですよね」



先月、那覇市で行われた朗読のワークショップ。県内で舞台朗読を行う団体「沖縄可否の会」のメンバーらが参加し、津嘉山さん直々に沖縄戦にまつわる作品の朗読を指導しました。

▼石堂綾さん(作品を朗読)
「機銃ね、機銃の音とあの音は違うさ。艦砲の音とも全然違う。落ちるでしょ、近くにドカーンって」
▼俳優 津嘉山正種さん(81)
「機銃の弾の大きさと艦砲の弾の大きさ分かりますか?分からないよね?これくらいあるわけよ直径が。艦砲の弾の直径よ。ということの思いを石堂さんが持って語らないと、ただ台本を音声化しているだけに過ぎない」



これまで、本格的に朗読を指導することはなかったという津嘉山さん。しかし、ある心境の変化があったと話します。

▼俳優 津嘉山正種さん(81)
「『このままで俺いなくなっていいのか』と思っちゃうわけですよ。俺が今までやってきた朗読・沖縄の話・平和の話・基地の話、そういったものをどこかにつなげていくべきじゃないか。俺はこのまま逝くと心残りがあるなという気持ちが何度も芽生えてくるわけだ」

朗読を通して沖縄戦を語り継ぐことを「次の世代にも続けてほしい」。そして津嘉山さんは、自身が語ることへの情熱も絶やしてはいません。



▼與那嶺啓キャスター
「津嘉山さんにとって6月23日とはどんな日ですか?」

▼俳優 津嘉山正種さん(81)
「忘れちゃいけない日ですよね、絶対。もう80歳を超えたからね。でもまだ語ることはできるかもしれない。だったら語れる間中なんとか。舞台でぶっ倒れるならぶっ倒れるでいいじゃない。それまで語り続けようと今思っているわけですよ」

津嘉山さんは、「沖縄だからこそ発信できることがある。伝え続ける責務は、あなたにもあるんですよ」とまっすぐにこちらの目を見て語ってくださいました。今後も沖縄戦に関する作品の朗読を県外でも続けたいと意欲を燃やしていました。