生物多様性の宝庫とも言われる名護市大浦湾。普天間基地の移設工事によりその姿を変えようとする今、海を見守り続けてきたダイバーは何を思うのか。取材しました。

進む移設工事 変わる辺野古の海

唯一無二の自然が残る大浦湾。その自然の豊かさは、世界的にも注目を集めてきました。

周辺の海域は多様性に富んだ、およそ5300種の生き物たちが生息することで知られ、2019年にはアメリカの環境NGO団体から「ホープスポット(希望の海)」に認定されています。

岩本俊紀さん
「大浦湾の最大の特徴というのは広大なやんばるの森、川、海がつながっているというところ」

サンゴの保全を呼びかける「サンゴ礁ウィーク2024」に合わせ、3月16日に「代執行で危機にある大浦湾のサンゴを見る会」が開催されました。

ガイドを務めたのは大浦湾で10年以上ダイビングツアーを続ける岩本俊紀さんです。

岩本俊紀さん
「やっぱり生き物も豊富だしサンゴも素晴らしいし、希少な生き物も多いっていうところで、魅力ある海だと思います」

向かったのは普天間基地の移設のための工事が進む海域です。

平良記者
「石材投下が続く現場のすぐ近くです。海の中にはサンゴ礁の周りで泳ぐ小魚も確認できます」

そこには生き物たちの命を脈々とつないできたサンゴの姿が広がっています。

埋め立てられようとする海はどんな海なのか、参加者は岩本さんの案内で船の上から水中スコープを使い、様々なサンゴが海の中に生息する様子を観察しました。

長らく大浦湾の海でガイドをしてきた岩本さんは、普天間基地の移設に伴う工事が始まったことに憤りを感じています。

岩本俊紀さん
「もう一言で、悲しいの一言です。昔は臨時制限区域なんかも張られる前は、向こうの辺野古の方まで、ダイビングの後、辺野古の方までお客さんをお連れして、天気のいい日はエメラルドグリーン輝く海を見てもらってました。今は行動範囲が狭められてますよね」

そして岩本さんが最も懸念しているのが、工事が進むことによる環境への影響です。

岩本俊紀さん
「工事の際に汚濁防止膜を張り巡らせとしても、その隙間を縫って、泥というのは拡散されるはずなんです。今、沖縄本島でも屈指のサンゴポイントだと思っているが、そういうサンゴが失われていくであろうということに、すごい危機感を持ってます」

「生態系の基礎を支えてるサンゴなので、サンゴがなくなればおのずとそこを住処としている小魚・甲殻類もなくなってしまうっていう現実があるんです。そうなるともう死の海、墓場化した海っていう形になってしまう」

多くの人を魅了してきた大浦湾海は今、姿を変えようとしています。