■ 400年の伝統 “塩加減と天日干しの手間ひま” 子どもを育てるように

12月5日早朝、長崎魚市に今日子さんの姿がありました。原材料となるボラの真子の仕入れです。

今日子さん:「初めて来ました。来たことなかったです」

10月から1月にかけて、1キロ 8千円近くで流通するボラの卵巣『ボラ真子』

からすみは400年変わらない製法です。
原材料は真子と塩のみ──ごまかしはききません。

数日間、塩漬けした後、薄さ1ミリにも満たない皮を揉んで “塩を抜く作業”が完成度を左右します。

復活に挑戦するきっかけとなったのは、2代目の妻で、今日子さんの大伯母にあたる小川 八重子さん(88)です。

今日子さんが東京で暮らしていた頃、八重子さんが毎年欠かさず送っていた からすみが途絶え、その大切さに気付かされました。
2011年、東日本大震災をきっかけに長崎に戻った今日子さんは、今年9月から“復活”に向けて動き始めました。今年の秋からは本格的に製法を学んでいます。

八重子さん:「無理して揉んで 袋を破ったら中身が出てしまうから、品物にならんですたいね。“手加減”が口では言われんですたいね。“手加減”一つで味が変わるからね」
今日子さん:「途中で破って味見ができないんですよ。中身にどれぐらいの塩分が入っているのかも分からないし…目で見て、触って覚えてくださいみたいな」
八重子さん:「そうそう…触って覚えんばね」

八重子さん:「(4代目の登場は)嬉しいですよ。もう私は仕事はできないから。腰が痛かったりこげんともする気にならん。

やっぱり可愛がっとるけんですね。色々手間がかかるでしょ?(天日干しは)2時間おきに返したり(表面の油を)拭いてみたり。そいけん…やっぱり自分の子どもを育てるような感じですたいね」

必要な量を確保するため、ボラ真子は長崎産から国産へと思い切って変更しました。今度こそ“息長く続けていく”ためです。

今日子さん:「こう(一部が白く)なっとるとは…なんで?日焼け?」
八重子さん:「塩の抜けとらんとかもしれん。そいけんが丁寧に揉まんばと。見かけの悪かやろうが」
今日子さん:「私が揉んだかな?ははは」

■ 若い人たちが手に取ってくれる“提案”

拭いては干し、干しては拭く、を繰り返すこと一か月以上。
からすみが飴色に仕上がりました。

八重子さん:「うまかね。ちょっと辛かねっていう感じけど、こんくらいでもいいやん。99点」