9月1日は防災の日。災害が起きた時に備えて警察と県民が協力して情報を共有する取り組みがあります。中山間地域で暮らす人が多い高知だからこそ、大きな役割を担っているんです。

高知県安芸市畑山地区にある宿泊施設、ジローのおうち。こじんまりとした宿ですが、土佐ジローなどを使った料理とおもてなしで、国内だけでなく海外からも宿泊客が訪れる人気の宿です。

宿を経営するのは小松靖一(こまつせいいち)さん。

「1年で1000人くらいの泊まりのお客さん。2部屋しかないのに」(小松靖一さん)

畑山地区は、安芸市の中心部から車で40分ほどの山間部。畑山川が流れ、のどかな風景が広がっています。ところが、今年3月…

(今橋広海記者)
「土砂崩れのあった現場付近に来ています。ここから約100m先で土砂崩れが発生していて、現在急ピッチで作業が進められています」

中心部と畑山地区をつなぐ県道210号で、山肌が突然崩れ、道路をふさぎました。迂回路がないため、15世帯、24人が5日間にわたって孤立してしまったのです。

(畑山地区在住 小松靖一さん)
「そんなに雨降ってなくて、前の日にちょっと降ったのかな。あの日しかもあの規模の土砂崩れっていうのは全く想定してなくて。ふと見たら携帯の電波がなかった。電気はあるのに通信手段がなくなってしまったので。固定電話もないし」

高齢者も多い、畑山地区。この時、小松さんは「衛星電話」を使って、被災状況などを警察や市に連絡しました。

(畑山地区在住 小松靖一さん)
「山の中やここの暮らしはすごく楽しいはずなのに、年にどのくらいかの割合でそういうこと(自然災害)を想定して暮らしていかないといけない。近隣の状況を気にかけておくのはみんなが持ってないといけない認識ではないか」

小松さんが地区の状況を率先して気にかけているのには理由があります。その一つが、「災害モニター」という役割を担っていることです。

災害モニターとは、平成16年から全国で始まった制度で、災害が発生した時や発生が予想される場合に、自宅や勤務先周辺の被災状況・避難状況などを警察や自治体に伝える役割があります。県内でも平成30年4月から導入されていて、小松さんも含め76人が登録しています(8月24日現在)。県東部、7つの市町村を管轄している安芸警察署には、14人のモニターがいます。

「こんにちは安芸警察です」

安芸市の入河内地区を訪れたのは、警察官。畑山地区と同じように山に囲まれた地区ですが、まだモニターがいないため、協力を求めるために訪問しました。

(警察官)
「ご自宅または勤め先の被災状況や避難状況などについて情報提供をおこなっていただくということで、こちらが災害モニターご協力の紙になりますのでよろしくお願いします」

地区の事業所に勤める安岡豊(やすおかゆたか)さんも、新たにモニターに。安岡さんはこれまでの大雨や台風による被害を自身でもまとめていて、この地区で過ごしているからこそ分かる情報提供で、災害時の迅速な対応に協力できればと話します。

安岡豊さん

(入河内地区勤務 安岡豊さん)
「落石や山崩れ、川の増水など災害が起こるとしたらそういうこと。毎日職場まで来てるので職場までだったら状況が自分らでわかるので協力できたらいいかなと」

小松さんや安岡さんのような災害モニターからの迅速で正確な情報は、警察にとっても、応援物資の調達や人命救助など一刻を争う事態にとても重要です。

(安芸警察署 須賀証 警備課長)
「どんなささいなことでも災害時には貴重な情報。被災がないということ自体も重要な情報。(道が塞がって)孤立してしまう地域全てにお願いができているわけではない、まだまだ十分ではない。協力していただける方がいればぜひ協力していただいて今後もモニターの数を各地域に増やしていきたい」

中山間地域が多い高知県だからこそ、その一本の電話が、大きな役割を担っています。被災の可能性が高い地域は山間部や海の近くで、電波の届きにくいところもあります。モニターには高齢の方もいるので世代が変わっても新たな方を見つけてお願いし続けなければいけません。ご覧になって、皆さんが住む地域や勤務先の地域が孤立の可能性が高いと感じたらぜひ警察に情報を提供してください。