男子マラソン前哨戦トリオは全員が手応え
男子ではMGCファイナルチャレンジ2大会(2月25日の大阪マラソンと3月3日の東京マラソン)に出場する西山和弥、菊地駿弥、土井大輔の3人の走りが注目された。10月のMGCで優勝した小山直城(27、Honda)と2位の赤﨑暁(26、九電工)がパリ五輪代表に内定済み。ファイナルチャレンジで2時間05分50秒をクリアした記録最上位選手が、パリ五輪代表3人目に内定する。
3人とも全日本実業団ハーフマラソンは、マラソンにつなげることが出場目的。タイムはあくまでも目安だったが、土井が1時間00分51秒(6位)、菊地が1時間00分57秒(9位)、西山が1時間01分42秒(25位)で走った。
東京マラソンに出場する西山は、レース前は1時間1分台を目安としていた。「予定通りです。良いスピード練習になりました。まだ(脚の裏側の付け根に)詰まりがあるので、表情が険しくはなるんですけど、呼吸とかキツくなかったですし、ゴール後もあまりダメージはありません。痛み自体はありますが、(走りは)良い感じだと思います」
昨年2月の大阪マラソンで2時間06分45秒、初マラソン日本最高で日本人トップの6位と健闘した。8月の世界陸上ブダペストに出場したが、前述の脚の痛みがあって42位に終わった。12月までは追い込んだ練習ができていない。
「甘くないと思いますが、最後まであきらめずにファイナルチャレンジ設定記録に挑戦します。世界陸上の苦い思い出や悔しい思いをもってここまでやってきたので、それを最後に見せられれば」
やはり東京マラソンに出場する菊地は、「1時間0分30秒」を目安に走った。30秒以上上振れしたが、予定通りの範囲だったことを強調した。
「2分52~54秒を刻むのがちょうど良い。走っていてそう感じたので、61分をちょっと切るくらいと予想していました。予定通りに7割、8割で走って、最後の1、2kmだけガッと上げました。(マラソンにつなげる)イメージ通りの走りができましたね。東京では良いタイムが出せるんじゃないか。自分で自分が楽しみな感じです」長距離関係者の間でも、菊地に記録を期待できるという声が多くなっている。
東京マラソンを走る2人が抑えた走りをしたのに対し、土井だけは「全力」で走り切った。マラソンまでのインターバルも、1人だけ2週間と短い。
「1時間0分台は、練習がかなりできていたので、タイムを狙っていたわけではありませんが、普通に走れば届くだろうな、と思っていました。黒崎播磨のマラソンへの流れとして、このハーフマラソンを全力で走らないと、2週間後のマラソンで体が動きません。それが前提にあるので、ここに向けて調整してきたわけではありませんが、今日はほぼ全力という形で走りました。その上で1時間0分台が結果としてついて来たのは、ちょっと自信を持てる部分にはなります」
大阪マラソンでの目標タイムは「2時間7分切り」と、ファイナルチャレンジ設定記録は目標としない。これは「自分の走りに集中する」ためで、「練習の手応えは、その先も」感じている。全日本実業団ハーフマラソンは、全国タイトルであり、そこで好成績を収めることにも価値がある。だが、次の大会につなげていく要素も強い。
パリ五輪につなげたい樺沢と男子の3選手、天満屋の先輩を追って成長したい西村。彼らの“今後”も見続けていくことで、今回の全日本実業団ハーフマラソンの意味が大きくなる。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真は左から樺沢和佳奈選手、菊地駿弥選手