静かな集落を襲った衝撃
2013年7月21日、山口県周南市の山あいにある金峰(みたけ)地区で、住宅2棟が全焼し、焼け跡から3人の遺体が発見されました。翌日には近くの2軒の住宅からそれぞれ1人の遺体が見つかり、計5人が殺害される衝撃的な事件でした。
静かな集落の様子は一変しました。同じ集落に住む保見光成死刑囚が殺人と放火の疑いで逮捕され、最高裁で死刑判決を受けました。最高裁はことし1月、再審を求める弁護団からの特別抗告を退け、再審を認めない決定をしました。
悲惨な事件から12年。この事件で殺害された女性(当時73)の娘と孫が、講演で今の思いを語りました。被害者の遺族にとって、この12年はどのような時間だったのでしょうか。
「おばあちゃんは熱中症で倒れただけ」
事件当時、小学4年生だった佳代さん(仮名)は、大好きな祖母を失いました。人のために動くことを惜しまず、お世話をするのが大好きで、周囲から愛された人でした。

しかし佳代さんは、祖母が殺されたことを直接誰からも聞かされませんでした。事件の当日に父と現場近くまで行き、警察による事情聴取が行われている最中も、祖母が亡くなった、殺されたということは全く聞かされていませんでした。
佳代さん
「本当にニュースを見るまでは、祖母が熱中症か何かで家の中で倒れただけだと思っていました」
佳代さんが真実を知ったのは、事件当日の夜、全国放送のニュース番組を家で見た時でした。