害獣駆除は必要か。趣味の生け花では葛藤も
――会社を辞めるのを止められましたか。

黒田未来雄氏:
テレビ局を辞めるときも、もったいないってすごく言われました。僕にとっては自分の人生のこれからの限られた時間をそのポストでいる方がよっぽどもったいなくて、今の方がいいです。たくさん稼いでたくさん消費してという、ライフスタイルに慣れすぎちゃっているというか。そうじゃないやり方がたくさんあって、それはその人が自分の一番心地いいやり方を選べばいいんじゃないかなと思います。
――以前は物々交換の世界が存在していた。
黒田未来雄氏:
「人間よ謙虚であれ」というのも、人間としての常識は狩猟採集民族として何十万年やってきた。農業が1万年前に始まり、貨幣経済が始まったのはごく最近じゃないですか、人類史から見ると。そんなものはなくても20何万年、ホモサピエンスはずっと幸せに生きてきたわけです。一つの目線でこれが常識でしょうみたいになってしまうと、いろんなものがおかしくなってきて、今自然のバランスが大きく崩れてきている。
例えば駆除の問題があります。農業被害額は北海道で年間40億を超えているんです。農家さんもせっかく育てたものが食べられちゃう。コントロールするためにシカをある程度駆除しなくちゃいけないっていう問題が今起きているんです。駆除せざるを得ない状況をどう思われますか。

――駆除すべきだと思います。
黒田未来雄氏:
そうすると、地球上で一番増えすぎている種って何なんだろうと僕は思うんです。1950年代は25億匹だったのが、2050年には100億匹になろうとしている種がいるんです。その種は地球の環境をものすごい勢いで変えていって、いろんな動物を絶滅させている。問題になっている種は本当にエゾジカなんですか、それは人間でしょうっていう。人間の論理で例えば経済という観点から見て、シカを悪者だとか駆除すべきだ、コントロールしようという考え方や行動自体が、僕から見るとちょっと切ない。「人間よ謙虚であれ」というのはそういうことなんです。
――「わたしのサステナ・ライフ」ということで、ずっと続けたいと思う趣味や日課を教えてください。
黒田未来雄氏:
趣味で生け花をやっておりまして。

――4年前から始めた生け花は、人に教えることができる資格を持つほど。黒田流の生け花とは?
黒田未来雄氏:
自分で生ける花も自分で採ってきたいという願望があるんです。山に入って、何百本か何千本だかわからないですけど、そういう木の中から1本いただいて。命を扱っているという意味では狩猟と近しいものがあると思っていて、逆に、僕にとってはシカを撃つよりもカタクリの花を1本摘む方が倫理的な割り切りが難しいような気がしているんです。
シカは自分が食べるために撃って、それを食べないと自分の命を継続できない。食べるという大義名分があるんですが、花を生けるということにおいてそこまでの大義名分が。家に花が飾ってなかったとしても死ぬわけじゃないですから。美を表現するということは、花の命を奪ってまでそれをやっていいのだろうかみたいな葛藤があったりもするんです。
――シカも黒田さんもカタクリの花も生き物としては同じ存在ということですか。
黒田未来雄氏:
そうですね。それでも、花を生けていく。そこまでしてもやっぱりこういう表現がしたかったんだなと思っていただけるような美しさみたいなものを表現できて初めていい花を生けたなって思えるんじゃないかなと。全然僕はまだそんな境地に行っていないんですが、いつか花にありがとう、ごめんね、でも、こんなにきれいに生けたけたよって言えるような花を生けるのが夢です。
(BS-TBS「Style2030賢者が映す未来」2023年12月17日放送より)














