■「国を発展させた・・・、必要悪として粛清や恐怖政治もやむを得ない」


ヨシフ・スターリン。功罪両面で歴史に名を刻んだ。
ひとつは第二次世界大戦における独ソ戦の勝利。ナチスを破った指導者として功績。ひとつは反体制の政治家、知識人、技術者の大粛清を断行した独裁者としての顔だ。

このスターリンについて1991年こんな調査結果があった。
「20年後には歴史学者以外誰もスターリンのことを覚えていないと思う人」・・・70%。ところがそれから30年たった今、覚えていないどころかスターリンは再評価されている。

防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「ソ連崩壊が91年の12月ですから、この調査はその直前だったのでしょう。その頃はスターリンの粛清など悪い面が知れ渡り嫌悪感が強かった時。(中略)しかし、プーチン大統領になってスターリンの偉業を思い起こさせ、自らとスターリンを重ね合わせるような言説が高まった。」

調査を行ったレバタセンターでは、その後もスターリンへの評価を調べ続けてきた。これによるとプーチン氏が大統領に就任して以来、スターリンへの嫌悪感や恐怖心は急速に減り、現在では、敬意や好感といった評価が60%に及んでいる。残りの多くは無関心で、ネガティブな評価はほとんどなくなった。しかし、この評価はロシア国民の自発的な変化ではなく、プーチンがそう導いたからだと兵頭氏は言う。

防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「スターリンのマイナスとプラス両方含めながらも偉業の部分を国民に浸透させ、自らと重ね合わせながら今のプーチンで言えば『国を発展させたのだが、必要悪として粛清や恐怖政治もやむを得なかった』そういう雰囲気を醸し出していると・・・」

スターリンの負の部分を隠して礼賛するのではなく、功罪明らかにした上で、大きな功を成すためには犠牲はつきものだとした。こうしてプーチン氏はロシア国民にスターリンを再評価するように導きながら、自らの正当性をアピールしている。