『昆虫や他の小動物への影響』『土砂災害』などの懸念も

 そしてシカによる被害は山頂だけではありませんでした。1合目から山頂へと続く登山道では…。

 (記者リポート)
 「伊吹山の山頂付近に来ています。土がむき出しになっています。シカが草を食べることで土が流れ出し、土砂災害や登山道が使えなくなる危険性があるといいます」
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 登山道もかつては両脇に花が咲き誇っていたといいますが、シカに全て食べられ、草すらも残っていない状態になっていました。
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 (京都大学・農学研究科 高柳敦准教授)
 「植物がなくなれば、それをエサとしている動物、昆虫とか他の小動物にも影響が出ますし、土壌の流出が起きたりしている。一番の大きな問題は、柵をしても中への執着度が非常に高くて、柵を壊して入ってくるその意欲が、他の場所のシカとは段違いですね」

 他の山では防護柵でシカを防げるといいますが伊吹山ではそうはいかないといいます。

猟犬を使ってシカを追い出す作戦も

 夏が本番を迎える前に対策として伊吹山に投入されたのが猟犬です。取材した日には柵の内側の藪に住み着いているシカを追い出す作戦が行われました。
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 合図とともに猟犬が走り出しました。
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 そして、犬が薮の中に入ると、それに驚いたのか、勢いよくシカが飛び出してきました。最後にはシカは柵をなんとか飛び越えてそのまま外へと逃げていきました。
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 駐車場に逃げ出すシカも…。この日は5頭ほどのシカが柵の外へ出ていきました。

 温暖化の影響で冬に積もる雪の量が減りシカの生息域が広がったことなどが急増した原因とみられています。自然環境をどう守っていくのか、有効な対策が急がれています。