自身を救ってくれた「娘」の存在、そして「祖父の手紙」

そんな中、被災当時に有美さんのお腹の中にいた娘の阿美ちゃん。夫婦にとって大きな支えとなりました。

(田坂昌士さん)
「皆を笑顔にしてくれるから、すごく助かりました」

(阿美ちゃん(4))
「カエル描こうか?カエル捕まえられるよ」

失ったものにばかり目を向けていた有美さん。残された大切なものに気づかされたといいます。

(田坂有美さん)
「これは小さい頃に私に向けておじいちゃんが残してくれた手紙。『これは取っておこう』と思って。『これは取っておかないといけない』と思って、これだけは残したんです」

有美さんが小学生の頃、今は亡き祖父からもらった手紙です。大好きだった祖父の存在も、被災後の有美さんを支えてくれました。

(田坂有美さん)
「『どんなことにも負けないで育ってくれよ。お前たちはおじいちゃんの命だからね』と。『うん、負けない』と思って。だからこれは捨てられなくて…」

ヨガスタジオの再建を手伝ってくれた仲間たちも宝物をくれました。

気付かされた「大切な日常」

(田坂有美さん)
「先輩が知らないところで私のアルバムの写真を撮って、こういうふうに小さいアルバムにして残してくれた。うれしいというか感動というか、言葉にならなくて。『何もかも捨ててなくなったけど、仲間が財産だね』と。仲間やこういう言葉に助けられたなと思います」

有美さんたちは、再び真備でスタートを切ることができたのです。この地で全てを失ったわけではありませんでした。

(田坂有美さん)
「『日常こそ特別』と毎日思っている。今のゆっくりお茶を飲む時間とか、子どもと遊んでいる時間とか、本当に特別だし、今やっと皆で笑い合えてよかったなというのは、『ちょっと耐えてよかった』と…」

あの日から5年。かけがえのない日常が少しずつ戻ってきました。

(田坂有美さん)
「5年は、あっという間」

(田坂昌士さん)
「いろんな出来事がいっぱいあったので、思い出はいっぱいあるけど、あっという間」

(田坂有美さん)
「みんな頑張っているし、その中にいられていいなと。楽しいことをやって、輪が広がっていけばいいなと」