■生きて帰らねばならぬ 絵を描くために
出征直前まで作品づくりに没頭していたという日高安典さんはフィリピン・ルソン島で生涯を閉じました。27歳でした。


窪島さんの著書には、日高さんがスケッチブックに遺した言葉が記されています。「小生は生きて帰らねばなりません。絵を描くために-」


(無言館 窪島誠一郎 館主)
「『生きていれば、もっともっと絵を描いていただろうに』という気持ちになるのは誰しも当然です。当然ですけれども、それだけでは雲の上の彼らは気の毒すぎますね。なぜなら彼らは憐れんでもらうために絵を描いたわけではないですから。」
「自分の愛するものを、命を込めてそこに表現したわけですからね。人間には生身の命と『自分が生み落とした作品』という命がある。彼らの場合は作品さえ生き残れば彼らはまだ死んでいない。」
もう一度絵筆を握る日を夢見ながら戦火に散った画学生。生きた証であるそれぞれの作品から声なき声が静かに語りかけてきます。