■絵が語る、様々な無念… 「でも憐れんでほしくない」
「もう二度と絵を描けないかもしれない―」画学生は、愛するものを心に刻むように絵筆を動かしました。
(無言館 窪島誠一郎 館主)
「この絵は敏子さんという妹さんをお描きになった。戦地に発つ直前にこの絵を描くんですけれど、敏子さんは、兄が戦死する前に肺結核で亡くなるんですね。」


戦地で知らされた妹の死…そして自らも戦火に命を落とした興梠武さんの絵です。剥がれ落ちてしまった絵の具の跡はまるでその無念を代弁するかのようです。
(無言館 窪島誠一郎 館主)
「『美しく元通りにする』ということが、必ずしも彼らの絵の存在力を高めるとはいえない。むしろこの欠けている時間の経過も含めて『無言館』という美術館は存在する。」
作品の時間は約80年前で止まったままです。
芸術を学びたい、その真っすぐな思いさえ、戦争は否定しました。


(無言館 窪島誠一郎 館主)
「この非常時に、兵隊さんが満州でみんな亡くなっているそんな時期に、『裸の女をデッサンしているなんていうのは不届き者、非国民、国賊』…だから世間からはみんな白い目で見られた。それだけの村八分に遭いながらも芸術を志した若者たちがちゃんといたということですよね…」
「絵を描き続けること-」それが、彼らにできた唯一の抵抗だったのかもしれません。