標準記録突破が期待できる坂井、中島、田中、橋岡ら
日本選手権前に標準記録を破っていなくても、日本選手権本番で突破して3位以内に入ればブダペスト代表に内定する。
男子100mではサニブラウンだけでなく、坂井隆一郎(25、大阪ガス)も10秒00の標準記録突破が期待できる。GGPでは左脚のふくらはぎが攣りそうな状態でも10秒10をマーク。予選では10秒08と、昨年出した自己記録の10秒02に次ぐタイムでも走っている。本人も9秒台への手応えを大きくしていた。
400mの中島佑気ジョセフ(21、東洋大)は今季、45秒台前半を静岡国際(45秒46)、木南記念(45秒39)、GGP(45秒31)と3レース連続でマーク。風などに恵まれれば45秒00の標準記録突破、日本人2人目の44秒台を実現させそうだ。
走幅跳の橋岡優輝(24、富士通)はGGPでは7m90と振るわなかった。同じ歩数でも助走距離を6mも短くするほど、走り方を変えている過程だからだ。だが4月に米国で8m11をジャンプしている。新しい助走と踏み切りが噛み合えば、8m25は簡単に越えてくるだろう。
男子やり投でオレゴン9位だったディーン元気(31、ミズノ)は、GGPに82m09で優勝。昨年83m台を連発したパトリクス・ガイルムズ(25、ラトビア)に2m36の差をつけた。標準記録の85m20はディーンの自己記録(84m28)を上回るが、自分の投げに徹すれば「自然に出る」と感じている。
女子では田中希実(23、New Balance)が1500m、5000mで代表入りに挑戦する。今季はここまで1500m中心のレース選択をしてきた。GGP優勝時にはスローペースではあったが、ラスト1周を60秒56の過去最速レベルのラップで走った。調子は上がっている。標準記録の4分03秒50はペースが速くならないと難しいが、可能性はゼロではない。楽しみなのは今季初戦となる5000mだ。負荷の大きいポイント練習と組み合わせるジョグを、かなり速いペースでできているという。標準記録の14分57秒00はもちろん、14分52秒84の日本記録も射程圏だろう。
廣中璃梨佳(22、JP日本郵政グループ)、山本有真(23、積水化学)も標準記録に届く可能性がある。
100mハードルは寺田が好調だ。本人は走りにもハードリングにもまだ納得していないが、自己新の12秒86を2回マークした。「12秒7台を安定して出して、今年中に12秒6台も」というレベルまで視野に入れている。12秒78の標準記録はその通過点になる。
走幅跳の秦澄美鈴(27、シバタ工業)は5月3日の静岡国際で6m75の自己新。GGPは6m48にとどまったが、ファウルで6m86の日本記録前後の距離が出ていた跳躍もあったという。日本新を跳べば、6m85の標準記録も同時に超えられる。
そしてやり投は代表に内定している北口に続き、63m80の標準記録を破る選手が現れるかもしれない。斉藤真理菜(27、スズキ)、長麻尋(23、国士舘クラブ)、上田百寧(23、ゼンリン)の3人が今季、60mスローを見せている。
特に斉藤は4月の織田記念で62m07と6年ぶりに62m台を投げ、5月の木南記念も61m63と、高いレベルで安定し始めた。2人目の代表内定も現実的になってきた。
8月2日以降にRoad to Budapest 23の順位で代表入りすることも可能
繰り返しになるが、標準記録は世界的にも高いレベルで設定されている。標準記録突破選手だけでは、大半の種目は出場選手数枠が埋まらない。そこで世界陸連が、各国が選手選考をする際の材料にできるRoad to Budapest 23を作成している。
その順位が5月26日時点で10位台に付けているのが、以下の選手たちだ。
【Road to Budapest 23の順位が10位台の日本選手(5月26日)】
<男子>
■110mハードル
石川周平(28、富士通)18位
■3000m障害
青木涼真(25、Honda)14位
■走高跳
赤松諒一(28、アワーズ)11位
真野友博(26、九電工)15位
■やり投
ディーン元気(31、ミズノ)13位
小椋健司(27、エイジェック)18位
崎山雄太(27、愛媛陸協)19位
<女子>
■5000m
田中希実(23、New Balance)19位
■走幅跳
秦澄美鈴(27、シバタ工業)17位
■やり投
斉藤真理菜(27、スズキ)17位
標準記録突破の期待が大きい選手たちと重なるが、これらの選手たちは標準記録を破れなかったときも、8月2日以降に世界陸上出場資格をもつ選手として世界陸連が発表する可能性が大きい。
男子110mハードルは標準記録突破者3人(村竹は欠場)に加えて石川が、世界陸上出場資格を得る可能性が高い。やり投は現時点で3人が出場資格を得られそうだが、82m21を今季投げている新井涼平(31、スズキ)もいる。日本選手権で3位以内に入ることが重要かつ、激戦となる種目だ。
世界陸上ブダペストの選考手順を理解しておくことで、今年の日本選手権を面白く見ることができる。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)