このグランドキャニオンの地層には大いなるナゾがあります。なんと10億年分の地層が途中で消えているのです。番組でも撮影したのですが、17億年前の地層のすぐ上が7億年前の地層になっていて、その間の地層がありません。

消えた地層

このグランドキャニオンの地層の消失は19世紀には見つかっていたのですが、なぜこんなことが起きたのかは長年のナゾでした。

削り取られた10億年

その後、地球の他の場所でも同じような地層の消失がいくつも見つかっており、地質学では「大不整合」と呼ばれています。近年、原因として唱えられている仮説のひとつが「スノーボールアース(全球凍結)」というものです。スノーボールアースとは、7億年前、氷河期のピークに地球のほぼすべてが氷に覆われた状態を指します。このときに巨大な氷河が10億年分の地層を浸食して削り取ったという仮説です。確かにこれなら、地球規模で地層の消失が起きていることの説明はつきます。

さらに10億年分の地層が削り取られたことが、生命の進化にも影響したのでは・・・という説も出てきています。「カンブリア爆発」と呼ばれる爆発的に多様な生物が海に出現した現象があり、これはカンブリア紀の5億年4200万年前から5億3000万年前、つまりスノーボールアースの後に起きています。そのためスノーボールアースのときに氷河が削り取った膨大な量の地層が海洋に流れ込み、その成分が生物進化を加速させたのではないか・・・という仮説です。

一方、削り取られた10億年の間にも生命は進化を続けていて、その痕跡がスノーボールアースの時期に地層と共に消失してしまったために、カンブリア紀になって突然、爆発的に生命の多様性が進んだように見えるのではないか、という説も出てきています。

地球環境の変化と生命の進化・・・こうした新説・仮説が誕生するのも、グランドキャニオンのように20億年の地層、つまり地球の歴史を一覧できる所があればこそなのです。