
ーー頭数も多いのに繁殖が上手くいかなかったのには、どんな問題があったのですか?
単純に一つだけの原因ではないと思うんです。水族館で生まれたラッコたちはエサを与えられる生活しか知らない、いわば“温室育ち”状態だったともいえます。世代が変わるにつれて、野生の感覚が失われたり、妊娠しても流産してしまったり、母乳が出なかったり…。様々な要因が重なった結果として受け止めています。
ーーでは、最初に海外からラッコが来たように、今後また輸入されることはないのですか?
1998年以後にアメリカの国内法で野生のラッコの捕獲や輸出は原則禁止されていて、2000年には国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定されています。
これにはいくつかの理由があるのですが、まず1989年に大きな出来事がありました。ラッコが多く住む地域、アメリカのプリンス・ウィリアム湾でタンカー原油流出事故が起き、3000頭あまりのラッコが死んでしまいました。1回の人為的な事故で…と思うかもしれませんが、このインパクトは非常に大きかったんです。
その他にも、シャチに食べられてしまったり、サメがオットセイの仲間と間違えてラッコを噛んでしまったり、海洋汚染による病気など、これまでと違う原因がたくさん出てきたものですから、世界的に野生のラッコを守った方が良いですよねということになっているわけです。