13秒0台を安定して出せれば「メダルも」

泉谷が21年6月の日本選手権で13秒06(+1.2)を出したとき、陸上界は驚愕した。そのシーズンの世界5位タイの記録で、当時の日本記録の変遷からも驚異的なレベルアップだったことがわかる。

【2000年以降の110mハードル日本記録変遷】
13秒50 2001年10月17日 内藤真人
13秒47 2003年7月20日 内藤
13秒39 2004年8月24日 谷川 聡
13秒36 2018年6月24日 金井大旺
13秒36 2019年6月2日 髙山峻野
13秒36 2019年6月30日 髙山
13秒36 2019年6月30日 泉谷駿介
13秒30 2019年7月27日 髙山
13秒25 2019年8月17日 髙山
13秒16 2021年4月29日 金井
13秒06 2021年6月27日 泉谷

髙山峻野(28、ゼンリン)の19年の13秒25も、世界大会の決勝進出を期待できるレベルだった。実際に同年世界陸上ドーハでは、予選で13秒32(+0.4)をマーク。準決勝ではハードルに脚をぶつけて敗退したが、前述のタイムは予選全体で5番目だった。

21年に金井が出した日本人初の13秒1台で、世界大会決勝進出の期待がさらに高まった。それから僅か2か月で、泉谷が日本人初の13秒0台をマークしたのである。

今年の木南記念で泉谷は13秒25の自己サード記録を出したが、セカンド記録は13秒21だった。「13秒1台を出したことがないので」と、13秒0台よりも13秒1台を安定して出すことを重視していた。それができれば世界大会で決勝進出が可能な、準決勝での13秒2台を確実に出すことができる。

しかしGGPの13秒07で、泉谷は目標を修正した。「コンスタントに13秒0台を出せるようになったら、決勝は(間違いなく)見えてくる。あわよくばメダルも取れるんじゃないか、と思います」

自身も400mハードルで世界陸上に入賞経験のある山崎コーチは「110mハードルでも海外で後半が強い選手と戦うときに、前半で焦らないことです」と前半の重要性を指摘する。6月の日本選手権後に出場予定のダイヤモンドリーグを利用して、スキルを研いていく。

2度目の13秒0台で、世界陸上日本人初の決勝進出の可能性は高まった。それを確実にするためにも、そして12秒台を出すためにも、泉谷の前半の走りが重要になる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)