泉谷駿介(23、住友電工)が世界陸上ファイナルへのステップを1つ上がった。ゴールデングランプリ(GGP)2023横浜は5月21日、今年は横浜市の日産スタジアムを舞台に15種目が行われた。男子110mハードルは泉谷が、2位に0.18秒差を付ける13秒07(+0.8)で快勝。19年ドーハ、22年オレゴンと世界陸上2連勝中のグラント・ホロウェイ(25、米国)が4月15日に出した13秒01(±0)に次ぐ今季世界2位のタイム。21年に泉谷自身が出した13秒06(+1.2)の日本記録に0.01秒差と迫った。2度目の13秒0台は1回目より、さらに世界に近づいた手応えがあった。
前半の改善ができれば12秒台も可能な状況に
序盤は6レーンの泉谷と5レーンの髙山峻野(28、ゼンリン)、4レーンのイリバルネ・ロヘル(27、キューバ)が並んでいた。3台目から泉谷が僅かに前に出て、以降はじりじりとリードを広げ、フィニッシュでは13秒25の髙山に0.18秒差を付けていた。3位の石川周平(27、富士通)は13秒36、4位のロヘルが13秒37だった。
昨年の世界陸上オレゴン準決勝の各組4位のタイムは、1組が13秒46(-0.6)、2組が13秒40(+0.3)、3組が13秒22(+2.5)。安易な比較はできないが、追い風参考記録となった3組以外は今大会よりタイムが低い。今年のGGPは世界大会準決勝をシミュレーションするには格好のレベルで、そこで快勝した泉谷は世界大会決勝進出が期待できる。
序盤でリードできなかったのは髙山とロヘルも速かったからで、この3人は国際大会でも前半に強い選手に分類できる。だが泉谷はレースの振り返りで、序盤を「もたついた」と話していた。
「ウォーミングアップで(前レースの)木南記念より動いていたので、前半から突っ込んでしまうと(ハードルへの接触など)ちょっと危ないかなと思って、気持ち抑えめに行きました。2年前の13秒06は前半も、中盤以降もほぼ完璧というか、結構うまくいったレースでした。今回はハードルに何台かぶつけましたし、前半のもたつき具合だとか、中盤以降のハードル間のさばきだとか、全てをもう一段階上げればタイムは上がってきます」
山崎一彦コーチ(順大監督)も「前半から行くと(勢いが付きすぎて)歯止めが効かず、グチャグチャになってしまう可能性がありました。その点は想定通りの走りができた」と評価する。
ハードル間のインターバルタイムは、動画からの簡易分析では1台も1秒を切っていなかった。「1秒ちょっとでずっと行った」(山崎コーチ)と推測される。後半で他の選手が少しずつペースダウンするところで、泉谷はペースを維持したことでリードを広げたのだ。
「2台目から3台目、4台目がまだ向上させられる」と山崎コーチ。前半が上がれば後半で、多少のペースダウンをしてもスピード自体は高くなる。「1秒を2回くらい切れば12秒台が出る」(同コーチ)と期待できる。