中国では習慣のない「飲み会」でコミュニケーション深める

―――従業員のみなさんと飲み会を何回もしてこられたそうですね?
 私が日本法人の社長になって、従業員たちともっと距離を縮めたいと考えました。でも、なかなか従業員たちとつながる機会を作るのは難しいです。何か壁みたいなものを感じていました。それでどうしようか、と考えて「飲み会」という形を思いつきました。中国では飲み会の文化はありませんが、やってみようと。すると仕事中に従業員たちに声かけてもあまり反応は良くありませんでしたが、飲み会になるとコミュニケーションが深まりました。最近では、従業員たちから「また来てくださいよ、しばらく飲んでいませんよ」と言われます。

―――ハイアールの強みを教えて下さい。
 早めに未来を予測しながら対応できる会社だと感じています。基本の経営手法としては、「人単合一(じんたんごういつ)」という経営理念です。単に自分の仕事を担当するだけではなくて、「自分がCEOだ」というような気概で仕事と向き合うように、と従業員には伝えています。従業員ひとりひとりがCEOとして仕事に向き合い、市場に新しい価値を創出していくという考え方です。私自身、いまでも「先頭に立つために必要なチカラとはなにか?」とよく考えます。これは経営者にとって重要な課題ですが、考えれば考えるほど、「まだまだ足りていない」という気持ちになります。従業員の立場でもそのような心構えが重要です。

―――新型コロナウイルスの影響は、いかがでしたか?
 結果から言えば、ハイアールはこの3年間、利益や売り上げは全部伸びています。新型コロナウイルスによるマイナスの影響はないと言えます。2020年の中国の旧正月の辺りでコロナ禍が始まって、その時はどこの会社も中国での生産や商品の提供ができない状況でした。それから3年間、同じ状況が続く会社が多かったんです。でもハイアールは、1台の欠品もありませんでした。1機種の納品遅れもなかったです。

―――通常通りに生産・営業ができたということですか?
 交通がストップしてしまって、従業員が実家に帰って工場に戻れない状況になりましたが、会社は大量のバスで何百kmと離れた従業員の家まで迎えに行って、会社まで連れて帰りました。会社は、感染防止の条件を厳しく設定して、従業員が新型コロナウイルスに感染したり、感染させたりしないようにして、恐らく中国で一番早く生産ラインを再開したと思います。