■加盟国トルコが難色を示すワケ

では実際NATOはどうなのかというと、歓迎ムードです。

NATOのストルテンベルグ事務総長は、「フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請を温かく迎えます」と前向きな姿勢を示しています。

このNATO加盟は、加盟している30カ国全ての承認が必要なんですが、そのうちの一つのトルコは難色を示しています。

トルコのエルドアン大統領は「スウェーデンはテロ組織の温床。加盟に賛成することはできない」

トルコのチャブシオール外相は「フィンランドとスウェーデンがテロ組織を支援しているという安全保障上の懸念がある」と否定的な姿勢なんです。

では今後、難色を示しているトルコの説得はできるのか、またロシアはどう動くのか注目されそうです。


ホラン千秋キャスター:
畔蒜さん、トルコの懸念に対してNATOは以前、その懸念を解消できると思うというような趣旨の発言をしていましたが、それが難しそうなのかという点について教えてください。

笹川平和財団主任研究員 畔蒜泰助さん:
トルコ側が非常に懸念してるのは、スウェーデンとフィンランドにいるクルド人の難民です。この中にトルコがテロリスト指定をしている組織の人がいるということで、そちらの引き渡しをどうやら求めているということですね。これは、どう考えても西側の人権の基準からいって、彼らをトルコに引き渡すというのは、とてもちょっと考えられないと。だとすると、これは想定外だと思いますが、もしかしたら相当交渉が長引く可能性があるんだと思いますね。

ホランキャスター:
思っていた以上にスムーズにこの申請から加盟のプロセスが進まないのではないかと。

畔蒜さん:
その懸念が今出てきているということだと思いますね。

井上貴博キャスター:
その部分をもう少し細かく教えていただきのですが、トルコが懸念しているのが、反政府・武装勢力を支援しているフィンランドとスウェーデンをNATOに入れることはできないと、これトルコの主張なんですけど、トルコのいったことは実際に行われているか、ある程度の難癖をつける形でキャスティングボートを握りたいというトルコの意思なのでしょうか?

畔蒜さん:
ある意味これは、条件闘争でもあると思うんですね。難民のクルド人を引き渡すという問題。それからもう一つ、スウェーデンとフィンランドがトルコに対して武器の輸出の規制、制裁をかけていますが、こちらも要するに解除してくれとも言っている。さらに実は、アメリカもロシアからトルコが「S400」という地対空ミサイルを買ってることに対して、トルコに制裁をかけてるんです。
こちらもトルコは、アメリカに対して制裁の解除を求めているということです。今のところどのタイミングでこの問題が解決するのかは、ちょっと今は見渡せないところだと思います。

■加盟までの空白期間は?

山形アナウンサー:
では、フィンランドとスウェーデンのNATOへの正式加盟はいつになるのでしょうか?

NATOのストルテンベルグ事務総長は、5月15日、「前例のない速さで進む」と話しています。

また、ロシア政治に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は、「NATO関係者の話として、特例で2022年10月くらいまでには加盟が可能ではないか」と分析しています。

5ヶ月ほどとみられますが、それでもフィンランド国民は、「加盟が認められるまでの“空白期間”が心配だ」と話しています。

この“空白期間”の安全保障体制について、イギリスでは5月11日、両国ともに相互的な安全保障宣言に署名しています。そしてアメリカのバイデン大統領は5月18日、ロシアの安全保障に対するいかなる脅威に対しても、警戒を怠らず、侵略や侵略の脅威を抑止し、立ち向かっていくと協力的な姿勢を示しています。


ホランキャスター:
畔蒜さん、安全保障の関係性があれば、“空白期間”があったとしても大丈夫だと安心していいものかという点について教えてください。

畔蒜さん:
ロシアもさすがに、フィンランドとスウェーデンというNATOに加盟することをほぼ確実にしているこの2カ国に対して、何か軍事的な行動を起こすというのはちょっと考えられないです。ウクライナはロシアのプーチン大統領にとっては、安全保障と同時に歴史的な一体性というところが非常に重要なポイントでした。そういう意味では、フィンランドとスウェーデンは、プーチン大統領の特別な意味というのはありませんので。これに関しては、それほどロシアがウクライナのような形の行動をとることは、ちょっと考えられないと思います。