「今のロシア連邦で遠心力が働いているのは間違いない」
“連邦からの独立”について、ソビエト連邦とロシア連邦、日本語ではどちらも“連邦”と訳すが全く別物だと前の駐ウクライナ大使、倉井氏は言う。

前・駐ウクライナ大使 倉井高志氏
「ロシア人の使う言葉だと、ソビエト社会主義共和国連邦の“連邦”は“ソユーズ”なんです。ロシア連邦の“連邦”はフェデレーション。大きな違いを一言で言えば脱退が認められるかどうかなんです。ソ連は脱退が認められた。ソユーズだから…。レーニンがソ連を創ろうとしたとき、民族自決主義に則って、それぞれの民族の自由意志で構成される連邦“ソユーズ”とした。しかし、スターリン以降力で抑えていた。憲法上は脱退することができるんだけれど、事実上はできなくなった。それがロシア連邦になって法律上もできなくなった。それが大きな違い…」
ソ連が崩壊した時14の国が独立した時は、憲法で保障された独立なので堂々と独立できたが、ロシア連邦からの独立となると簡単ではないという。それでも独立への機は熟しているのか…。
前・駐ウクライナ大使 倉井高志氏
「今のロシア連邦で遠心力が働いているのは間違いないと思うんです。中央との関係で実現するかはこれからの問題なんですが、これまでより緩んでることは確かだと…」

防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事
「そもそもロシア連邦っていうのは、ロシア民族やロシア正教の割合が圧倒的と言いながらも多民族で多宗教国家。さらに今のロシア連邦の国境線沿いに限定される国家統合の要素は厳密にいうと無いんです。ですから強い指導者が必要になってくる。だからプーチン氏の指導力、統率力が弱まってくると分離主義的傾向が強まる」
二人の専門家によればカディロフ首長が率いるチェチェン共和国までもロシアから独立する可能性はあるという。プーチン氏が大事にしているロシア民族でもなければ、ロシア正教でもなく、プーチン氏の力が衰えれば一緒にいる方の理由ないといえるというのだ。
分裂した地域のうち地下資源が豊富な場所には、中国が手をのばし、そしてイスラム教の共和国はトルコになびく…そんな現象も考えられるという。プーチン氏にそんな遠心力が働くのか…それはウクライナの今後の反転攻勢の趨勢にもかかっている。
(BS-TBS 『報道1930』 5月16日放送より)