なぜ香澄さんのトロンボーンが岡山の高校に?

閉ざされてしまった香澄さんの未来。この香澄さんの思いを、遺された詩を通じて知ったのが、20年以上前の明誠学院吹奏楽部の部員たちでした。

香澄さんの詩は歌になり、明誠学院の演奏会で歌われるように(2002年)

歌になった香澄さんの詩「窓の外には」。同年代でこの世を去った香澄さんの思いをつないでいきたいと、明誠学院では全ての演奏会で奏で、そして歌っているのです。

香澄さんの父 新一郎さん(2002年)

(父・小森新一郎さん)「香澄のメッセージが音楽を通して広まっていくということが、私たちとしてはとても意味深いことだと思っています」

そんな明誠学院の高校生たちの思いに胸を打たれた香澄さんの両親。5年前に、ある決意をしました。

2018年、両親は娘のトロンボーンを携え岡山に

部屋に眠っていた香澄さんの “形見” とも言えるトロンボーンを、遠く離れた岡山にある明誠学院高校に譲り渡すことを決めたのです。

(母・小森美登里さん)「主人が一言、『音の出せない楽器はかわいそうだよ』と言っていて、その言葉が頭に残っていて」

(両親)「よろしくお願いします」
(明誠学院高校吹奏楽部顧問 稲生健教諭)「お預かりさせていただきます。ありがとうございます」

「星の向こうに未来がある 未来の向こうに愛がある」

以来、明誠学院の演奏会では、香澄さんの詩だけでなく香澄さんのトロンボーンによる演奏も加わりました。

香澄さんのトロンボーンもステージに

(明誠学院高校吹奏楽部 岩村伊都岐さん)「香澄さんのトロンボーンはずっと見ていて、優しい音色だなと思っていたんですけど、いざ息を入れてみると音がまっすぐ飛んで、それでいて輪郭はすごくやわらかくて。香澄さんの思いが詰まっているのかなと思いました」

(♪歌と演奏)「星の向こうに未来がある 未来の向こうに愛がある 愛の中には心がある 優しい心がそばにある」

(明誠学院高校吹奏楽部 髙杉理歩子さん)「いちばんは『どういう経緯で香澄さんが詩を作ったか』とか、詩にある気持ちや思いを自分の中で置き換えたり読み込んだりして思いを込めて…」

全ての演奏会で披露している「窓の外には」。明誠学院の演奏会場では、歌詞に生徒が手話もつけています。その手話も、毎年少しずつ改良を重ねているというこだわり。

演奏と、歌と、手話。「1人でも多くの人に香澄さんの思いを届けたい」という思いがあります。

(明誠学院高校吹奏楽部 小塚真央さん)「『優しい心がいちばん大切だよ』という香澄さんの思いが世界中の人に届き、世界中が笑顔であふれますように…」